(1)序章


1980年、対馬海峡
「どうだ、奴さん諦めたか?」「レーダー反応ありません。」
日本初のイージス鑑「かいりゅう」艦長、尾崎武は額の汗を拭いながら大きな溜息をついた。
「極秘の処女航海でいきなり潜水艦に追尾されるとはな・・・。で、音響データの照合はどうなっている。」
「一致する物はありません。あるいはうわさの『重慶』クラスの新造鑑かも。」
「中国のか?本部へのいい手みやげを頂いたというところか。」
艦橋に笑い声がおこったまその時、レーダー手の声がスピーカーから響く。
「艦長、またです。しつこいなあ。」
「いや、違う、さっきのヤツじゃない!!」
「ソナー、さっきのヤツじゃないって?!」
「全く音響が違います。既知の艦船のいかなるものとも合致しません!第一これは・・・スクリュー音がしない!!}
「鯨じゃないのか?」
「全長役100m、速度60ノットで本鑑に向かってきます。」
「機関最高出力!一気に引き離せ!!」
「ダメですっ、相手の方が高速です!!」
「国籍不明鑑、無線に応答無し!」
「防衛隊本部に連絡、非常の場合の発泡許可を!!」
「違う・・・これは潜水艦なんかじゃない、これは・・・・!!!!!」

(2)「きらめき」撃沈!


200X年初夏、対馬海峡。
日米韓合同演習を終えた日本海上防衛隊イージス鑑「きらめき」は季節外れの台風2号による荒波に揉まれながら、母港・佐世保への帰途についていた。
望遠鏡から目を離した艦長は後ろにいた一等航海士に声をかけた。
「ずいぶんと揺れるな。」
「波の高さは7〜8m、でもこのくらいの波なら『きらめき』は大丈夫です。」
「そういえば、尾崎少尉、来月結婚するんだってな。
 お相手はなかなか別嬪の女医さんだそうじゃないか。
 何で私のところには招待状が届かないんだ?」
「か、艦長、何でそんなことまでご存じなんですか?」
「艦長の地獄耳を知らないのか、尾崎。悪いことはできんぞ〜。」
副長が笑いながら彼の肩をポンポンと叩く。
「尾崎の目にはあの真っ暗な海の向こうに美人のフィアンセの顔がみえてるんじゃないのか?」
「副長までからかわないで下さいよぉ。
 艦長、今回の任務が終わったら彼女と一緒に仲人のお願いにあがるつもりでした。」
「えっ、私に仲人をしろってか?」「是非お願いいたします!」
深々と頭を下げた誠を仲間たちの明るい笑いが包み込む。
が、顔を上げた誠はふとその異変に気づく。
「・・・あれっ、何だあそこ?!」
「どうした尾崎?!」「左前方に青白い光が。」「雷じゃないのが。」
「そんなんじゃなくって・・・ぼうっと・・・」
艦橋にいたみんなが目を凝らす。
その時警報がけたたましく鳴り響く!
「レーダー室どうした?!!」「左前方11時の方角に環礁!」
「環礁だぁ、こんな所に環礁なんかがあるものか?!」
副長の目配せで尾崎少尉が素早く海図を開く。
「無いぞ、そんな環礁なんて!」
「おおっ、あ、あれかっ?!!」
艦長の声に皆が振り向き艦の前方を見つめる。
「光ってる、確かに光ってる!その環礁とやらが光ってるのか?!」
「環礁が・・・・接近しています!」「5ノットに減速!面舵いっぱ〜い!!」
「ダメです、ますます接近!!」「減速して転舵したんだ、そんなはずはあるまい!」
「信じられないことですが・・・環礁が・・・環礁自らが本艦に向かって近づいてきています!!」
「船ではないのか?!」「左舷、環礁を黙視で確認、船ではありません!!」
「じゃあいったい?!!!」

次の瞬間その環礁はいっそう激しく青白い光を放ち、「きらめき」は眩い閃光に包まれる。

海上保安庁の巡視艇が「きらめき」の遭難海域を目指す。
そこには一片の漂流物すら残されてはいなかった。
「台風のために全ての手がかりが四散したのか。」
防衛軍上層部は台風が完全に過ぎ去ってからあらためて大規模な捜索活動を行うことを決定した。

同じころ東京の地下200mで進められていた「大東京地下鉄線」の工事現場では大規模な落盤事故が起こった。
現場に派遣されていた陸上防衛隊習志野普通科連隊の尾崎剛(つよし)は指令に呼び出される。
「電話だ、お兄さんからのな。」「兄貴から?」
長男尾崎巧(たくみ)は海防に所属、横浜にある第一防衛艦隊のイージス鑑「きさらぎ」の艦長をつとめていた。
いぶかしがりながら受話器をとる剛。
「誠(まこと)の乗った『きらめき』が沈んだ。」
尾崎誠は巧、剛兄弟の末弟であった。
彼は来月には長崎医大の女医、小島紗枝子と結婚する予定であった。
受話器を握りしめたまま立ち尽くす彼の周りがにわかにあわただしくなる。
現実に引き戻される剛。
「何があった?!」「坑道の先に洞窟が見つかったんだ!」
「それがいったいどうしたってんだ?」「とてつもなくでっかい洞窟らしい。」

事件はまだ始まったばかりだった。
「きらめき」の捜索に向かった巡視艇がその帰途、「青く光る島」とだけ謎の無線を残して消息を絶ったのだ。
政府は報道管制を敷く。
長男・巧は上司に海坊を中心とした捜索隊の派遣を提言していた。
「いつまでも隠し通せることじゃない。
 第一最新鋭の『きらめき』がたかが台風ごときで救難信号も出さず沈むなんてありえない。
 おまけに巡視船まで。日米韓合同演習を激しく非難していた北朝鮮の仕業ということも。」
しかし上層部は首を縦に振らなかった。
「こんなことが世間に広がれば君でなくとも北朝鮮を疑う声があがるだろう。
 しかももし北朝鮮が犯人なら、そこに海防の艦船を連ねて行ったらどうなる?
 弟を失った君の気持ちはわかるが、今は静観するしかあるまい。」

(3)島


対馬、美津島町診療所。
小島紗枝子は鳴らないケータイとにらめっこをしながら大きな溜息をついていた。
本来ならすでに佐世保に帰ってきているはずの尾崎誠からの連絡が無いからだ。
「急に極秘任務でももらったのかしら?これだから軍人なんてキライよ!」
「その軍人さんのところに好き好んでお嫁に行こうってのは誰だったかしら?」
婦長に冷やかされ赤面する紗枝子。
そんな彼女に長崎医大から対馬の沖合いの小島に渡って欲しいと電話が入る。
その島で一人しかいない医師が過労のため倒れたらしい。
さらに島では不思議な奇病が流行っているとの噂もあると。
その島の名前は「大戸島」といった。

島へ渡る定期船の船上で紗枝子は雑誌のフリー・カメラマン、森山と名乗る人物と出会う。
彼は言う。
「ここ数日やたら佐世保の動きがあわただしい。政府はだんまりを決め込んでいるようだが、日米韓合同演習に参加した『きらめき』が帰ってきた形跡がない。」
「きらめき」の名前を聞いた彼女の脳裏に不吉なものが走る。
ううん、心配ないわ。誠さんは私が渡したお守りが守ってくれるはずだもの。

果たして大戸島では何人もの病人が彼女を待ちかまえていた。
そして過労に倒れたという医師を含めみな似たような症状なのだった。
まさか、伝染病?!
しかし島には共同井戸が1つだけ、だとすればその原因は。
血液検査・井戸水の分析の結果が帰ってくるのは次の定期船がやってくる一週間後。
紗枝子は島の診療所で誠の写真を見つめながら一人呟く。
「誠さんはもう佐世保に帰ってきたのかしら?せめてメールくらいくれたって。」
「お姉ちゃんの恋人?あんちゃんのやつ、失恋決定だな。」
気づかないうちに部屋に入ってきたのは彼女の案内役をしてくれていた良太という少年だった。
「子供はあっち行ってらしゃい。え、『あんちゃん』って?」
「そんなしかめっ面してうなってばかりいるとせっかくのべっぴんさんの顔に皺が増えるよ。」
「こらっ、大人をからかうと許さないわよっ!」
「ごめんごめん、あんちゃんが先生を地引き網に誘ってやろうって。
 自分で言えばいいのに、あんちゃんのやつ照れ屋でさあ。」
紗枝子が良太に誘われるままに出かけた地引き網にかかったのは何と巨大な鯨の頭だった!

島の長老は唸るように言うのだった。
「シャチが頭だけ残すもんか。きっとゴジラの仕業にちげえねえ。」
「ゴジラ?何です、それ??」
「この島に古くから伝わる言い伝えでね、山のようにでっかい化け物のことでさあ。
 そいつは普段は海の底に棲んでいるんだが、海の魚食い尽くすと陸に上がってきて馬や牛はもちろん人まで食らったそうな。」
「またじいさまの『ゴジラ』が始まった。先生、そんな話まともに聞いちゃダメですよ。」
「言い伝えを馬鹿にすると、それこそ昔みたいにおめえら娘っこを生け贄に差し出さなきゃならなくなるかもしれねえんだ。」
「おあいにく様、私もう未通女じゃないもん。」
「処女を生け贄に差し出したんですか。」
「ああ、筏に乗せて沖へ流したんだそうな。」
「海棲は虫類の生き残りかしら?」
「何です、そのかいせい何とかってのは?」

(4)龍の寝床


診療所に帰って来た紗枝子をカメラマンの森山が待っていた。
「謎の奇病に今度はゴジラか。面白くなってきましたね。」
「何が面白いのよ!第一あなたこんな島に何の取材に来たの??」
「あいにくそれは企業秘密ってやつでね。」「私に何か用?」
「美人の女医さんが一人で悩んでらっしゃるのを見かねてちょっと知恵を授けてあげようかと思いましてね。」
「知恵?素人のあなたに何がわかるっていうの?」
「まあまあ、島の漁師には二通りあるってご存じですか?」「二通り?」
「そう、大半の漁師は外洋まででて漁をして本土の港に卸す。残りはこの島の周りで自分たちが食べる魚だけを捕ってる連中だ。病気になってるのは・・・」
「島の周りで自分たちが食べる魚だけを捕ってる人々だって言うのね!」

森山のモーターボートに乗って大戸島から少し離れた小島に向かう紗枝子。
その断崖絶壁の海の洞穴を進むボート。
「何だか気味が悪いわ。」
「ここは漁師たちが『龍の寝床』と呼んでる洞窟でね、20数年前から小魚の漁場になってるんです。」
「20数年前から?」「あれですよ。」
丸山が照らし出した懐中電灯の明かりが照らすもの、それは・・・・・
「船?!難破船!!」朽ち果てた巨大な船の残骸。
「日本初のイージス鑑『かいりゅう』。」
紗枝子にはその名前に聞き覚えがあった。
「そう、艦長はあなたの婚約者尾崎誠さんの父親、尾崎武大佐。」
「あなた、何でその名前を?!あなたいったい何者なの?!」」
丸山はその質問には答えず、バッグから見慣れない装置を取り出して水中に沈めた。
「ちっ、やっぱりか。前回の数十倍だ。やっぱりヤツが戻ってきたんだ。」
「何、何の話?!」「放射能ですよ。」「放射能?!この船は原子力船だったの?!」
「いいや、放射能の元はこいつを襲ったヤツですよ。」
丸山が懐中電灯で照らし出した「かいりゅう」の船腹には鋭い4条の裂け目があった。

(5)襲来!


大戸島に戻るボートの上で紗枝子は自問自答していた。
森山は何を聞いてもそれ以上の質問には答えなかった。
ゴジラ・・・長老が言っていたゴジラとか言う生き物が誠さんのお父さんが乗っていた船を襲った。
その生き物が放射能を帯びていて、船は汚染された。
そこに棲む魚たちも汚染され、それを食べた人たちに放射線障害が。
伝染病じゃなかったんだ。でも「ヤツが戻ってきた」って?!

「先生、あなたチョンボをやらかしましたね。」「何のこと?」
「本土に血液サンプルを送ったでしょう?
 まもなくこわ〜いお役人さんたちがこの島に大挙してやってきますぜ。」
「あなたいったい何の話をしてるの!」「政府のお偉いさんたちはこの島で起こってること全ての意味がすぐにわかるはずはずなんだ。」
紗枝子には森山の言ってる言葉の意味がさっぱりわからなかった。
「あなたの誠さんが乗っていた『かがやき』を沈めたのがヤツだってことだってとうに気づいてるはずだ。」
誠さんの「かがやき」が沈んだ?!そんなバカな!!
「おっと、口を滑らせてしまった。まだオフレコでしたっけ。」
「ウソよ、そんなのウソっぱちだわ!!」
「これからこの国にとんでもないことが起きようとしている。
 隠し通すことなどできはしないというのに・・・。」
泣き出した紗枝子の横で森山は天を仰いで呟いた。

果たして翌朝、島には爆音とともに数機のヘリが飛来した。
物々しい装備をした防衛隊隊員にまじって数人の政府高官が診療所を訪れる。
「小島紗枝子先生ですね。あなたが送ってこられた血液サンプルから未知の伝染性ウイルスが検出されました。
 この島を隔離します。もちろんあなたも含めて。」
「待ってよ!サンプルを送ってからまだ数日。ウイルス同定までできるはずがないわ!
 第一あれは伝染病なんかじゃなくて放射線障害・・・」
「何を根拠に?この島は一時的に我々内閣危機管理室が統括いたします。
 先生はお一人の激務でお疲れのようだ。別室にて静養いただきましょう。」

そしてその夜は突然の嵐になった。
軟禁状態の紗枝子はその「地響き」を感じていた。
規則的に、そしてそれは次第に大きくなってくる。
何かが来る!!そう、ゴジラ!!
部屋の外に飛び出そうとした紗枝子は倒れていた見張り役の防衛隊員につまづく。
その傍らに立っていたのはあの森山だった。
「いっしょに来ますか?もっとも私を信じられればだが。」
「どこへ行くの?第一あなたは誰なのよ?!!」
「本土に戻りましょう。ここにいては命が危ない。」
紗枝子はすでに何を信じていいのかわからなくなっていた。
暴風雨の中を森山に手を引かれ海岸を目指す。
その時確かに彼女は見た。
雷光が照らし出す、長老が言ったように山のように巨大な黒い陰が咆哮をあげる姿を。
「こんな荒れた海、ボートじゃわたれないわよっ!!」
次の瞬間、振り向いた森山の当て身を受けた彼女の意識はぷっつりと途絶えた。

(6)帝都、朝


都内の防衛隊基地。
「尾崎、尾崎、起きろ、お前に電話だとさ。」
こんな朝っぱらから電話なんかしてくるやつは誰だ?!
剛は眠い目を擦りながら起きあがった。
彼はここ連日例の地下で見つかった大洞窟の調査隊の護衛なんぞというつまらない任務に引っぱり出されてうんざりしていた。
体力を持て余しついつい夜更かしがすぎて寝起きが悪いのだった。
廊下に出て、娯楽室の電話を取ろうとした剛はTVの前で隊員たちが騒いでいるの気づいた。
「どうしたんだ、何かあったのか?」
「九州の小島で大規模な山津波があって、島は壊滅状態らしい。福岡の101普通科連隊が出動命令がでた。
 ああ、俺たちも探検ごっこよりそっちの方がいいなあ。」
「一日中スコップもって泥まみれの仕事がか?おれは探検ごっこで我慢するよ。」
笑いながら受話器を取る剛。
「もしもし、尾崎ですが・・・誰だ、お前?!」

紗枝子が目覚めたのはベッドの上だった。
彼女を心配そうに見つめる顔は・・・
「つ、剛さん!!」
「よかった、気がついて。どうしてあんな所にいたんだ?」
「あんな所ってここはどこ?!」
「防衛隊習志野基地の医務室だ。」「東京なの?!!」
「今朝知らないやつから電話があって、君が基地の近くの公園にいるって。」
「信じられないだろうけど、私、対馬の島にいたのよ。大戸島っていう。」
「おいおい、対馬の島だって??ここは東京だぜ。」
紗枝子は剛に昨夜までのいきさつを一つ一つ話し出した。
「バカな俺には何のことやらわけがわからん。
 だがその森山ってやつは俺が誠の兄貴だって知ってて君をここまで連れてきたってことなのか?」
誠の名前を聞いた紗枝子はがばっと跳ね起きた。
「剛さん、本当なの、誠さんが乗った船が沈んだって?!!」
剛は思わず黙り込んでしまった。
「何で何も言ってくれないの?!ウソでしょ、ウソって言ってよぉぉ!!」
紗枝子は剛の胸を拳で叩きながら泣き崩れた。
剛には躊躇いがちにその華奢な肩を抱きしめてやることしかできなかった。

その時医務室のドアが乱暴に開かれ、背広姿の男が数人駆け込んできた。
「小島紗枝子だな。我々は内閣危機管理室のものだ。君の身柄を拘束する。
 我々と一緒に来てもらおうか。」
「こらぁ待てぃ!!」
剛が紗枝子に手をかけようとした男の腕を取って捻りあげた。
「仮にもここは防衛隊の基地の中だ。役人ふぜいの勝手にはさせないぞ!!
 彼女は俺の弟のフィアンセだ。彼女をどこに連れていこうってんだ?!」
「わ、わかった。我々は話が聞きたいだけだ。君があの大戸島で何を見たのか?!」

紗枝子はまだ混乱していたが、自らを落ち着かせるようにゆっくりと話し始めた。
奇病のこと、龍の寝床のこと、森山のこと、そして・・・ゴジラのこと。
「見たのか、君は?!」
「嵐の夜でしたからはっきりはわかりません。
 ただとてつもなく巨大な生き物が雷光の中で青白い光を発しながら動くのを見たんです。
 恐ろしい声で吠えるのも聞きました。」
「青白い光?!」
男たちは互いに顔を見合わせた。
「あの島はどうなったんです?!島の人たちは、そしてあのバケモノは?!!!」
「島は・・・昨夜のうちにほとんど壊滅状態になった。君以外の生存者は今のところ確認されていない。」
紗枝子の頭の中に島で出会った人々の顔がフラッシュバックした。
「良太君・・・・!」
紗枝子は顔を覆って声を詰まらせた。
「TVでやってたのはその島のことだったのか。山津波とは・・・大嘘つきめ。」
「島中が焼け野原になった。」「焼け野原?!!昨夜は嵐で雨も・・・!」
「今のところはわからん。」
「じゃああなた方が知っていることを教えて下さい!あなた方が隠そうとしているのはあのバケモノのこと?!なぜ隠すんです?!!あのバケモノの正体は何なの?!!」

(7)密談


都内の防衛隊本部ビル
その応接室には防衛隊総指令・後藤忠と内閣危機管理室室長・柴崎健がソファーに座ってる。
彼らの正面では紗枝子の事情聴取をおこなった男が説明を終えたところだった。
「なるほど、20数年前に『かいりゅう』を沈めたバケモノが活動を再開したというわけだ。」
白髪で立派な髭を蓄えた後藤指令が口火を切った。
「先の『きらめき』と巡視艇を襲ったのもそいつの仕業だと言うことかね。」
「そうなります。」
答えたのは危機管理室室長、柴崎。
痩身で小柄な男だが、眼鏡の奥に潜む眼差しは鋭い。
「その目撃者の処遇、どうしますか?私はむしろ彼女をあの嵐の夜に島から都内まで連れ去った男の正体が気になります。
 目撃者の聞かされた身分は全く架空のものでした。こそこそと何を嗅ぎ回っているのやら。」
「地下組織のメンバーではないのかね?」
「公安のリストにはありません。あるいは他国の工作員の可能性が高いと思われます。」
「他国の?あのバケモノを嗅ぎ回ることに何の意味がある?」
「日本の四方は海です。あいつが活動を始めたなら海を接した国が・・・。」
「朝鮮、韓国、中国、ロシアか・・・。
 念のためにその目撃者には監視をつけておけ。再度接触してくるかもしれない。」
「すでに手配済みです。しかし・・・、首相にはいつ報告を?」
「あのパフォーマンスしか取り柄のない能なしに何の決断ができる?
 そもそも20年前の事件以来、わが防衛軍の一部と、君たち危機管理室の前身『治安部』がひた隠しにしてきた事実を、たかが小島一つ全滅したからといって公表してどうなる?
 特に先の日米韓合同演習以来、朝鮮との緊張は戦後最大に高まっている。
 下手に海防を大規模に動かそうものなら相手に絶好の口実をくれてやることになる。」
「第二防衛艦隊に出撃準備命令を出されたと聞きましたが。」
「ポーズだけだよ。艦隊は動かさない。ただ万が一・・・。」
「万が一?」
「あのバケモノが本土上陸を目指したときに『防衛隊は役立たずだった』などと軍不要論者の連中にしたり顔で言われたくはないからな。」
「指令、まさかあのバケモノのfirst attackを望んでらっしゃるのでは?」
柴崎が鋭い眼光で指令の横顔を見つめる。
指令は眉一つ動かさずにこう答えた。
「わが防衛隊は戦後最強の火力と機動力を手に入れた。
 だがその反面この平和な時代が何を生んだ?軟弱な平和ぼけ連中の『世論』とやらが我々を税金泥棒の居候に仕立て上げようとしている。
 だからやつがもし本土を目指すなら街の一つぐらいくれてやっても惜しくはない。
 その時我々は大手を振って軍を動かし、やつを殲滅してくれる。」
「つまり『パールハーバー』ですか。そして防衛隊は勝利の賛辞を一身に受けられると。」
「そうだ。そして我々はバケモノと、『世論』という敵相手に勝利するのだ。」

(8)横須賀、夜


ここは横須賀にある長男、巧の家。
巧の妻、尚子はやさしく紗枝子をいたわった。
「誠さんのこと、何と言っていいのか・・・。」
「私・・・まだ信じられないんです。」
紗枝子は思わずこぼれそうになる涙をぐいとこらえた。
剛はひとまず紗枝子を兄の家に預けることにしたのだった。
「剛、久しぶりに来たんだ。少し上がっていけ。」

「兄貴はどこまで知ってるんだ?」
「私が?私が知ってるのは今夕佐世保の第二防衛艦隊に出撃準備命令がでたことだけだ。」
「第二防衛艦隊に?バケモノ退治か?!!」
「そのバケモノ・・・ゴジラのことは初耳だ。」
「じゃあ何のための出撃準備だよ?」
「『きらめき』とその捜索に当たった巡視艇の事故を受けての海上保安の徹底。」
「何が『海上保安』だ!そんなまどろっこしいこと言ってる場合なのか?!」
「所詮一鑑隻の艦長にすぎない私に知らされることはその程度だ。」
「そんなことでこの国は守れるのかよぉ?!」
「それを論じるのは私の任務ではない。」
剛は思わず立ち上がって兄に詰め寄った。
「兄貴よぉ、もしかしたら・・・いやきっとそのバケモノが誠の乗った『きらめき』をやったんだぜ!
 よくそんな他人行儀でいられるな!!」
「私情を任務に持ち込まず。軍人なら当然だろう。第一お前さんの陸防はどうなんだよ?」
「都内の地下洞窟で学者さんたちの探検家ごっこのお供で忙しいよっ!」
ふくれっ面をした剛はドスンとばかりにソファーに腰をおろした。
「何か見つかったのか?」
「何でも恐竜の骨が見つかったってんで学者先生たちは大はしゃぎさ。
 生きたバケモノが海の底をうろついてるってのに平和なもんだぜ。」

(9)地下巨大空洞


関東巨大地下空洞入り口。
「わざわざお越しいただいてありがとうございます。筑波大学古生物教室の城山です。」
「北京大学考古学教室助手の楊です。黄教授は××の発掘で手一杯で、私が代わりに行けと。」
「日本語がお上手ですね。」「日本に留学していましたから。」
眼鏡をかけ髪型は変えているが、その楊という男はあの森山と名乗ったカメラマンである。

「すごい!どこまで続いているんですか、この空洞は?!」
「まだ調査の途中ですが、ほぼ東京の中心部全体に広がっているようなのです。
 おそらく先の関東大震災でこの空洞の地層に裂け目ができて、下の地層が沈下してできたもののようです。お見せしたいのはあれです。」
城山が指し示す先はライトが設置され、明るく照らされていた。
「こ、これはっ!」
それは巨大な恐竜の化石だった。
「肉食竜のものですね。T-REXに比べ頭部が小さい。新種か?それにしてもこの大きさはどうだ。」
「身長は推定で20m、全長は30mを越えます。問題はこの空洞の地層なのです。」
「この地層が?白亜紀のものではないのですか?」
「約200万年前のものなのです。」
「待って下さいよ、地球に人類の祖先が現れたときにまだこんな大型の肉食恐竜が闊歩していたとおっしゃるんですか?
 逆に惑星衝突による地球環境の激変を生き延びたとしたら、なぜこいつの種族は滅びたんでしょう?」
その時空洞の奥から懐中電灯の明かりとともに大声が。
「博士、ここにもありました!すぐそばにももう一頭!!」
城山と楊は顔を見合わせて懐中電灯の明かりの方へ走り出した。

「200万年前の日本に肉食恐竜の営巣地があった。こりゃあ新説というより、下手をすれば学会の笑いものになりかねません。十分調査が進むまで公表は差し控えたほうがいいかも知れませんな。」

(10)謎の男


「ホントにいいのかしら、私なんかが行って。」
剛が運転するジープは紗枝子を乗せて例の地下空洞の入り口のある地下鉄工事現場に向かっていた。
「君が見たという巨大生物の話を調査団の団長の城山先生にしたんだよ。
 そしたら是非会いたいって。」
「でも剛さん、あの件は口外無用だって政府の人に口止めされたてたじゃないですか。
 それに私、見たと言っても暗闇の嵐の中だったし。」
「あそこの調査結果だって今のところはオフレコなんだ。
 九州には巨大生物が現れ、一方東京じゃ肉食恐竜の化石が見つかった。
 たまたまの偶然なんだろうが、それを結びつけて考えるのは自然なことじゃないか。
 それに紗枝子さん、恐竜好きなんだろう?」
「えっ?!」
「去年のクリスマスのプレゼント、恐竜のフィギュアだったって?」
「どうしてそんなことを?!」
「『女のくせに変わったものをねだられた』って誠が・・・・。」
しまった!剛はつい口を滑らせた自分の愚かさを後悔した。
「ご、ごめん。君を元気づけるつもりがつい・・・。」
誠の名前を聞いた紗枝子の表情が一瞬曇ったが、すぐに彼女はにっこりと微笑みを返してくれた。
「ええ、変でしょう、私。子供の頃はホントに恐竜博士になりたいって思ってたんですよ。
 今日のこと、剛さんが敢えて計らって下さったんでしょう?」
「いやまあ、そのう、何だ・・・。」
「ありがとうございます。」

地下空洞内
「初めまして、私が調査団の団長、城山です。小島紗枝子さんですね。」
「ええ・・・、あ、これですね!!すごいわ、でもT-REXししては頭部が小さい、アロサウルスにしても・・・」
「やれやれ、解説はいらないようだな。」
城山はまるで化石を見て子供のようにはしゃぐ紗枝子を見ながら苦笑した。
「すでにこの洞窟の中で十数頭の化石が見つかってるんです。
 たぶんこのあたりに彼らの巣があったのでしょう。
 肉食恐竜たちが群で生活していたとはいままで例を見ない発見です。」
「日本の、しかも東京の地下にそんなものが眠っていたなんてロマンですわ!」
目をキラキラさせている紗枝子を見た剛は、つくづくここへ彼女を連れてきてよかったと思った。
「これが復元モデルです。外部の人間にお見せするのはあなたが初めてです。」
城山から手渡された模型をあらゆる角度から観察する紗枝子。
「で、いかがです、あなたが九州の小島で目撃されたという巨大生物に似ていますか?」
モデルを城山に返しながら紗枝子はしっかりした口調で答えた。
「夜の暴風雨の中でしたし、慌てていましたからはっきりとは見ていません。
 確かに似ているかと聞かれればそうかもしれません。
 この化石よりもっと巨大でしたし、背鰭のようなものがもっと大きく、青白く発光していたんです。」
「おお、発光器を持った恐竜ですか!」
今度は城山が身を乗り出した。
「そんなことよりずっと考えていることがあるんです。
 先生、被爆した生き物が20数年も生きながらえることは可能でしょうか?!
 放射性物質をばらまきながら生きている生き物なんてこの世に存在するのでしょうか?!!」

その時洞窟の奥から楊が調査団の団員たちと談笑しながら紗江子たちの所へやってきた。
楊は紗枝子に気づくと一瞬面食らった表情をしたが慌てて顔を背けた。
「あ、楊先生、こちらは小島紗枝子さん。九州の小島で・・・・」
紗枝子も楊の顔を見て思わず叫びそうになった。
紹介が終わった後、紗枝子は剛に近づき、小声で囁いた。
「剛さん、あの中国人の先生、私が大戸島であったカメラマンの森山さんです。」
「な、何だってぇ?!」
「しーーーーーっ!髪型が変わってるし、眼鏡も付けてらっしゃるけど間違いないわ。」
「わかった、とっつかまえてやる!」

剛はさりげなく楊の横に回り込み、彼の脇腹に拳銃を突きつけ小声で耳打ちした。
「森山君、皆に気づかれないように皆の輪から外れて頂こうか。」
楊を伴って空洞の暗闇に消えていく剛を心配そうに見送る紗枝子。

楊の背中に拳銃を突きつけたまま歩きながら剛は口を開いた。
「あるときは北京大学の助手先生、またあるときはフリーのカメラマン、お前いったい何者だ?!」
「弟さんのフィアンセの命の恩人にいきなりピストルを突きつけるのが日本人の礼儀かね?」
「お前、中国のスパイかっ?!」
次の瞬間楊は素早く前転を切りながら足で正確に剛の手の拳銃を蹴り上げた。
「ちぃぃぃっ!」
拳銃は暗闇に中に転がっていく。
剛も素早く楊の襟を掴み腰を払う。
ふわりと宙に浮いた楊はいとも容易く宙返りをして着地した。
「まだ私にはやらねばならないことがある。ここで君に捕まるわけにはいかないのだ。」
そういい残して楊は暗闇に消えていった。

(11)総理官邸


「何故だ、何故私が行ってはいかんのだ?!」
内閣総理大臣、大村俊作は机をバン!と叩き立ち上がった。
「ですからそのぅ、島には生存者がおりません。
 総理が慰問に行かれても出迎える者は誰も・・・。」
総理の前でペコペコ頭を下げ恐縮しているのは官房長官、佐々木信彦である。
「そういう問題じゃないだろう、島民100数十名とはいえ、島一つが全滅したんだよ。
 その国の総理が出向かずしてどうする!
 出迎えがいるとかいないとかの問題じゃない!
 パフォーマンスだよ、君!政治はまずパフォーマンスなんだよ、わかってるかね?!」
「ですが総理、島は凄惨な状態で、後かたづけも遅々として進んでおりません。
 無惨な死体がごろごろしている状態の島に、マスコミを入れるのはいくらなんでも。
 そんな状況で総理が慰問に行かても公開可能な画像が撮影できるかは・・・。」
「わかった、もういいっ!
 至急ヘリを用意したまえ!マスコミも同乗できるぐらい大型のやつだ。
 空から慰問視察する。それなら構わんだろう。」
「わかりました。」

一礼して部屋を出てきた佐々木を廊下で待っていたのは危機管理室室長、柴崎健であった。
「あのええかっこしぃめ!」
「総理は何と?」
「島に慰問に行くと言ってきかなかったが、何とか丸め込んだよ。で、その後島はどうなっているんだ?」
「それが・・・先遣隊の調査ではかなりの残留放射能があって、101普通科連隊も佐世保に足止め状態なんです。」
「放射能だって?!何でそんなことになってるんだ。それもあれの仕業だというのかね?!!」
「あれが放射能を残すことは『かいりゅう』の残骸から予測はついていたのですが、まさかあれほどのものとは。
 はっきり言ってあの島は放棄して封印するべきではないかと。」
「おい、冗談言っちゃこまる。島一つ捨てろというのか、我が国は島国なんだぞ!」
「ですが半永久的にあそこに人は住めません。」
佐々木はううんとうなったまま腕組みをして黙り込んだ。
「それ相応の理由は考えてくれよ。あの分からず屋を黙らせるに足りる理屈をな!!
 それから・・・防衛隊の方は大丈夫なんだろうな?
 あれがもし陸に上がってくるようなことがあればただでは済まないぞ。」
「それはもうぬかりなく。」

一礼して佐々木を見送った柴崎はちいさく舌打ちをした。
「ちっ、狸オヤジが。あれが上陸すれば島一つのことなんかみんな忘れちまうさ。」

(12)帰郷、そして・・・


JR新横浜駅 正午前 新幹線ホーム。

「いろいろお世話になりました。」
見送りに来た剛に紗枝子は深々と頭を下げた。
「いや、おれは何もしていないよ。あ、巧兄貴がよろしくってさ。
 それにしても何も今物騒な九州なんかに帰らなくても。」
「いつかはあの生き物が九州のどこかに上陸するのかもしれません。
 あるいは日本のほかの地に・・・いいえ、もしかしたら上陸してこないかもしれません。
 私一人全部放り出してここでその日を待ってるわけにはいかないでしょう?」
「そりゃあそうだが・・・。あの・・・もうこれで紗枝子さんに会うことは無いのかなあ?」
紗枝子はえっという表情をした。
「いつになるのか・・・誠さんのお葬式が出せるときにもう一度だけ呼んで下さい。」
しまった!またその名前を口に出させてしまった!!
剛は明らかに紗枝子に心を奪われていた。
美人で気丈で聡明な紗枝子にそういう感情を抱くのは男としてはごく自然なことであったろう。
が、その彼女は死体すら発見されていない弟のフィアンセだったのだ。

ホームの雑踏の中にアナウンスが流れる。
「次にホームに入りますのは11:58発、のぞみ15号博多行き・・・・・」
「それじゃあ、お元気で」
剛は紗枝子の列車が見えなくなるまでホームで大きく手を降り続けることしかできなかった。

座席に着いた紗枝子は深いため息をついた。
もう一度、佐世保へ寄っていこう。
自分の目であの港に誠さんの乗った「かがやき」が帰ってきていないことを確かめて、ちゃんとお別れを言おう。

博多駅でL特急みどり21号に乗り換えた紗枝子はぼんやり車窓を眺めていた。
初夏の長くなった陽はようやく西の山陰に隠れようとしている。
「失礼。」
隣の席にスキンヘッドにサングラスという出で立ちの男性が座ってきたのだった。
軽く会釈を返し、再び車窓に視線を移したとき、あの聞き覚えのある声が聞こえた。
「紗枝子さん、奇遇ですね。まさかこんなところまでご一緒するとは。」
「森山さん、あなたっ?!」
彼女は思わず振り返った。
サングラスを外し、いたずらっぽい笑みを浮かべた「彼」がそこにいた。
「あなたこそこんなところまで!」
「あそこであなたに再会するなんて予定外でしたからねえ。私もとんだドジを踏んでしまった。」
「学者になんか化けていったい何をするつもりだったの?」
「『化けて』はひどいなあ。こう見えても私はれっきとした考古学の博士号を持った・・」
「ウソおっしゃい!あなた、中国のスパイなんでしょう?!」
「しーーーっ!二つ後ろの席に2人、三つ前の席に2人、ずっとあなたに張り付いてる監視役がいるんですよ。」
「えっ?!」「いえ、正確にはあなたに張り付いて私を待ち伏せしてたんでしょう。」
「わざわざ捕まりに来たの?」
「やつらもバカじゃない。こんな人混みで捕り物をする気は無いでしょう。
 私があなたを人質にとってという可能性だってあるんですからね。」
一瞬怯えた表情をした紗枝子を見て彼は大きく手を横に振った。
「あ、冗談ですよ。紗枝子さんにそんなことをする気は毛頭ありませんから。」
この男の言うことはどこまで本当なのだろうか?
紗枝子はじっと「彼」の目を見つめた。
「私のことならご心配なく。こちらもプロですから、5人や10人まくのは造作もありません。」
「正体不明の男のことなんか心配してないわよっ!」
「命の恩人にそれはひどいなあ。」
ちょっと考えた紗枝子は大きく頭を下げた。
「あの時は命を助けていただきありがとうございました。これで貸し借りは無しよ!」
「はははは、いかにもあなたらしい。」
「彼」は愉快そうに笑った。
「本当に今度は何をしに来たの?」
「魅力的な紗枝子嬢に一言お別れが言いたくてね。」「えっ?!!」
「本国へ帰ります。私はもう面相が割れてしまった。今夜『船』が来ます。私の交代要員を乗せてね。
 佐世保までもうあとわずか、ご一緒していいですか?」
紗枝子はどんな返事をしていいかわからずじっと「彼」を見つめた。

次の瞬間列車は急制動をかけた。
椅子から転げ落ちそうになった紗枝子を「彼」がすかさず支える。
棚の荷物が飛び車内は怒号と悲鳴が乱れ飛ぶパニック状態になった!!
「何、いったいどうしたの?!まさか・・・・あなたが何かしたの?!!」
紗枝子は「彼」の手を振り払って睨み付けた。
「違う、私はなにもしていないっ!」

その時すでに「事」は起こっていたのだった!


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