高槻市上空
「現在ゴジラは高槻市近郊を時速40kmの速度で北東方向に向かって進行中。
 このままだとあと30分ほどで京都に達する見込み。
 上空から見る限り避難は順調に行われているようで目立った混乱は見えません。」
そこまで告げて通信を切った中島少佐は小さく舌打ちをした。
「ちっ、たとえあのゴジラがお札に操られらているとしてもだ、あれほどの大きさの生き物が移動すればそれなりの被害は出る。
 巫女だか何だか知らないが、たまたま予想が的中したからってゴジラを易々と内陸部まで引き込むなんて。」
「しかし少佐、ゴジラのヤツ、あの特甲弾の直撃を受けてよく生きていましたね。あるいは他の怪獣達も。」
「まぐれさ。瀕死の状態で生き延びたヤツが使いモノなんかになるものか。
 万が一にもディオガルスとの戦いで生き延びたら今度こそ俺自身の手でとどめをさしてやる!」

「あと30分か。」
ふぅっと溜息をついた大田原大佐は真田から声をかけられて振り返った。
「大佐、お話があるんですが。」
「聞こう。但し10分だ。」
真田は阿須美が言った「ディオガルスが日本中の魔を呼び寄せている」という話をする。
「あの巣がかね。」
大佐はう〜んと言って腕組みしたまましばらく黙り込んだ。
「わかった。ゴジラが接近すればディオガルスも巣を離れるだろう。
 ゴジラを監視してきた対戦車ヘリ部隊にそのまま巣を攻撃させよう。」
「それと・・・」
「ん?まだとっておきの秘術とやらがあるのかね。」
真田は「空船シュミレーター」のことを手短に説明する。
「お札よりは私にも受け入れやすいが、効果の方は大丈夫なんだろうね。」
「保証します!関ヶ原の戦いの後、立ち去っていくディオガルスは一瞬でしたが振り返りましたから。」
「誘導してどうするのかね?まさか君たちの話にあった鵺島とやらに誘導してお札で封印するつもりじゃないだろうね。」
「戦法のことはわかりませんが、せめて海上におびきだせば防衛軍も住民への被害は考えずに戦えるのでは?」
「それはそうだが・・・。」
「大佐、よろしいですか?」
「木村少尉、何だね?」
一歩前に進み出た木村少尉(怪獣島爆破で中島少佐の補佐をつとめていた。)はこう話し出した。
「怪獣島爆破に使用した特甲弾の残りが数発あります。
 それを全てどこか無人の小島にでも仕掛けて一気に爆発させてはどうでしょうか?
 特甲弾の爆発力は関ヶ原戦で使用した特乙号地雷とは比べものになりません。直撃なら確実に!」
「なるほど。しかしともかくそれはこの戦いの行方次第だな。
 怪獣が2頭。どちらが勝ったとしても後始末はつけねばならん。」

「斥候部隊から入電!ディオガルスが巣から出ます!」

ディオガルスの巣が一瞬怪しく青白く光り、それを形作る円錐柱の一角がぐにゃりと曲がり始める。
やがてそれは巨大な出口を形作っていく。
そしてその中から獣王がその姿をあらわした。
グゥォォォォォォーーーーーー!
闇夜の京都にそのまがまがしい咆吼が響きわたる。
その「龍」が来る方向をじっと見据えたディオガルスはゆっくりとその方向に向かって歩を進め始めた。

「ディオガルス、西南の方角へ移動を開始!」
「巣の側では戦いたくないということか。それならかえってそれは好都合だ。」
「大佐、別の移動部隊から入電!市内での通信回復!あるいは電磁界も!」
「停電は続いているんだろう、何故だ。」
「多分あの巣とディオガルスが2つで1つになって電磁の要塞と化すんでしょう。
 停電が続いているのは多分巣単独でもディオガルスにチャージするための電気エネルギーは貯蔵できるんじゃないかな?」
「なるほど、そういうことか。
 だったらなおさら主が留守の間に巣は潰させねばならんな。
 ゴジラ監視中のヘリ部隊に連絡、ゴジラとディオガルスが交戦状態にはいったのを確認したら直ちに巣の破壊に向かわせろ!」
「大佐、両者の移動速度からすると京都市街地のはずれあたりで遭遇することに。」
「わかった。我々も移動する!総員、乗車!」


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