ディオガルスは注意深く今や瓦礫の山となった駅ビルの周りを回っていた。
と、その瓦礫の山の中が数回青白く光った。 ズヴァヴァヴァヴァヴァッ!! 思わず飛び退くディオガルス。 青白い放射熱線が数回夜空に走り、瓦礫は再び宙を舞った。 「ゴジラ!」 怪獣王はその瓦礫の中から立ち上がり、正気を確かめるかのように数回その頭を左右に揺すった。 ディオガルスは前足の爪を伸ばすと身をかがめ、再びゴジラに飛びかかる。 ズドォォォォーーーン!! ディオガルスは仰向けに倒れたゴジラの上に馬乗りになり、その喉笛に鋭い牙を突き立てる。 グワォォォォーーーーッ!! 血泡を吹き、必死で身をよじって逃れようとするゴジラではあったが、それを許すディオガルスではない。 ゴジラはすぐ側の京都タワーに尻尾を巻き付けると力任せに引っ張った。 特殊銅板でできた高さ131mのランドマークはあっさりとゴジラに馬乗りになったディオガルスの背に倒れかかった。 しかし、それに怯むディオガルスではなかった。 いっそうその鋭い牙を深くくい込ませようとする。 が、もがき苦しむゴジラの手に“それ”は触れた。 京都タワーの尖塔部分。 バキッ! ゴジラは易々とそれを途中でへし折りディオガルスの片目に突き立てたのだった! グサッ!!ギュワォォォォーーーーーッ!! たまらず飛び退いたディオガルスは頭を揺すって異物を引き抜いた。 よろよろと立ち上がるゴジラを見つめる残った片目には憎悪の光が燃えていた。 ゴジラの後ろには防衛隊の攻撃を受け青白い閃光とともに崩れ落ちる巣。 再びディオガルスはその鶏冠をゆっくりと広げ始めた。 「また静電砲か!今度はどっちが来る?!!」 しかしそれはいままでのいずれの静電砲とも異なっていた。 鶏冠に走る電撃は今までのものよりはるかに大きく、そして赤みさえ帯びていた。 それに気づいたゴジラもいち早く背鰭を光らせ始める。 今度はゴジラの放射熱線が一瞬早かった。 そしてそれがターゲットを捉えようとしたその瞬間、究極の静電砲が発射された。 口と12枚の鶏冠から発した電撃は渦巻きのように互いに絡み合いながらゴジラの放射熱線をあっさりと押し返した。 そしてその直撃を受けたゴジラは五条通りまであらゆる物をなぎ倒しながら吹き飛ばされた。 無様に横たわった怪獣王は一瞬その頭を持ち上げようとしたものの、そのまま力無く五条大橋のすぐ脇の加茂川に頭を突っ込みぴくりとも動かなくなったのであった。 すでに動かなくなったゴジラに注意深く近づいたディオガルスは、前足で数回その体を揺り動かして自らの勝利を確認した。 そして天を振り仰いでひときわ長い勝鬨を上げたのだった。 クゥォォォォォォーーーッ! 吠え終えたディオガルスは片目を失った頭を振りながらゆっくりと巣へ向かって歩き出した。 「ディオガルスが巣に戻るぞ!ヘリとFを離脱させろ!」 「ラジャ!」 望遠鏡から目を離した大田原大佐は木村少尉を呼んだ。 「直ちに無人島の選出にかかれ。 決定次第、すみやかに特甲弾の敷設を完了せよ! 敷設に至るまでの全てを一任する!」 「はっ!」 「われわれは宝ガ池駐屯地に移動、空船作戦の指揮をとるっ!」 巣の前まで来たディオガルスは激しく破壊された巣をしばらく眺めていた。 それの短い咆吼に反応するかの様に巣の入り口が開く。 その傷を癒すためなのか、獣王は静かにその中に姿を隠していった。 「龍は・・・ゴジラは死んだのでしょうか?」 「阿須美さん、今はその感傷に浸ってもしょうがない。 この時のための空船だったはずじゃないか。」 「そうですね、真田さん。 龍よ、私たちのために戦ってくれてありがとう。」 阿須美は巨大な影となって横たわるゴジラに向かって手を合わせ目をつぶった。
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