ディオガルスの巣上空のヘリ機内
「少佐、ホントにこんなものであの怪獣を誘導できるんでしょうか?」 「俺に聞くな。だいたい今はいつだって思ってる? 科学万能の21世紀の世の中だぞ。 『龍返しのお札』だの『空船』だの、もうたくさんだ!」 「空船誘導作戦」の指揮を任された中島少佐はひどく不機嫌そうに言い捨てるともう一度巣を見下ろした。 「各機スタンバイ完了!」 「よしっ、本部に連絡しろ。」 将軍塚 大田原大佐以下の防衛隊員達と真田達はこれから始まろうとする「誘導作戦」の行方を固唾を飲んで見つめている。 「大佐、ヘリより入電。スタンバイ完了!」 「うむ、各機『空船シュミレーター』スイッチ・オン!」 巣を取り囲むようにホバリングしたヘリから誘導の調べが放たれる。 と、巣が怪しく光りながらゆっくりとその出口を形作って行く。 そしてその中からゆっくりとディオガルスがその姿を現した。 「おおっ、出て来たぞ!」 再びヘリ機内 「よしっ、各機フォーメーションをとりながら誘導を開始する!!」 ディオガルスは頭上の4機のヘリを見上げ、やがてゆっくりとその一歩を踏み出した。 「今度こそは神無島で息の根を止めてやる。徐々に時速60kmまで上げろ! 予定通りにいけば2時間ほどで伊勢湾だ!」 「やったぁ、成功だ!!」 隊員達から歓声が巻き起こった。 大田原大佐はふぅっと溜息をつきながら阿須美にふりかえりにっこりと微笑んだ。 「お嬢さん、今まで疑ってすまなかった。 長く軍人をやっていると何事にも疑り深くなるのはいわば職業病のようなものでね。」 「いいえ、しょうがないことですもの。 私はこういうことが当たり前な世界に生まれ育っただけです。 本来みなさんの世界とはあのディオガルス共々相容れない、交わってはいけない存在だったんです。」 真田はそんな阿須美の横顔をじっと見つめた。 まだ幼さが残るこの少女のひたむきな眼差しはいったい何を見てきたのだろうか。 「阿須美さん、きっと今度こそうまくいくよ。」 「ええ。」 真田はにっこりと微笑むその笑顔を素直にかわいいと思った。 獣王が視界から消え去ったのを見届けた将軍塚に陣取った人々の中から安堵の溜息が漏れた。 「予備の陸上部隊は名神高速で追尾を開始せよ!さて・・・あとはゴジラだが・・・。」 「金城のやつ、何やってるんだろう?」 「今金城さんから連絡が入りました。 まもなくこの将軍塚のヘリポートに到着するそうです。」 そしてその言葉通り彼らの上空にヘリが姿を現した。 ヘリから眠そうに目を擦りながら降り立った金城を出迎える真田と阿須美。 対照的に同乗してきた菖蒲は元気いっぱいという感じだった。 「遅かったじゃないか!」 「無茶言うなよ。これでも精いっぱい急いだんだ。 役に立たない助手さんにいちいち解説しながらね。 まず統括コントロール装置からゴジラのコントロール部分だけ外してだなあ・・・」 「役に立たなくて悪かったわね!」 「まあまあ・・・・。で、肝心の装置はどこだ?寝ぼけて本部に忘れてきたなんて言わないだろうな。」 「誘導用のアンテナはあのヘリにもう取り付けてある。本体はここさ。」 金城は片手にぶら下げた小さなバッグをさしあげて見せた。 「その中?おい、ウソだろう?」 「ウソとは何だよ!」 頬を膨らませながら金城はバックの中からノートパソコンほどの機械と水筒ほどの円筒形の機械を取り出した。 「こっちがゴジラにセットする受信機、で、これがコントロール装置の本体さ。」 「そんな小さな物であの巨大なゴジラを意のままに?」 「阿須美さん、もっとちっぽけなお札でゴジラ操って見せたのはあなたたちでしょうがぁ。」 「あら・・、そうだったわ。」 四人はぷっと吹き出した。
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