五条大橋

橋に停めたはしご車のはしごを延ばし、物々しい放射線防護服を身につけた真田と金城はゴジラの頭部に強化コントロール装置の受信機を取り付けている。
橋から心配そうにそれを見守る阿須美、菖蒲と数人の防衛隊隊員達。
振り向いて大きく手を振る真田。
「取り付け完了だ!」
ほっと胸をなで下ろす阿須美。

距離を取った所で防護服を脱ぐ四人。
すぐに一人の若い隊員が駆け寄ってきて彼らの体にガイガー・カウンタを当てて被爆のチェックを始めた。
「大丈夫です、みなさんいずれも基準値以下です。作業ご苦労様でした。」
「ふぅぅ、やれやれ。これで後はスイッチを入れるだけだ。」
「金城さん、龍は・・・ゴジラは立ち上がることができるんでしょうか?」
「阿須美さん、心配はご無用。あのコントロール受信機は『特製目覚まし』付きなんだよ。」
「目覚まし・・・ですか?」
「ああ。どんな寝坊のゴジラちゃんだって一発で目が覚める『大音量ベル』さ。」
「ベルって・・・。」
ますます怪訝な表情をする阿須美に金城は思わず吹き出した。
「その時には見せてあげるよ。で、真田、ゴジラの誘導はいつ始めるんだ?」
「ディオガルスの誘導に万が一でも影響があるとまずいからな。
 大佐とはディオガルスが遠州灘へ出て渥美半島を回り込んだ時点を考えている。
 ゴジラが伊勢湾に着く頃、ディオガルスは駿河湾の沖合いに達しているはずだ。
 そこまで行けば神無島まではあとわずかだ。」
「じゃあおれ達はゴジラちゃんを日本海溝までエスコートしてやればいいわけだな。」
「『ゴジラちゃん』だなんて、金城さんったらまるでゴジラがかわいいみたいね。」
金城は真顔で菖蒲に向き直った。
「かわいいさ。いくら放射能の影響でバケモノになったとは言え、あいつだって元はと言えば普通の生き物なんだ。
 人間みたいに理由もなく自分の身勝手で暴れたり殺したりはしないんだから。」
「金城・・・・、実はおれが少しだけ心配してるのはそこなんだ。」
三人は「えっ?」という表情で真田を見つめた。
「ゴジラは・・・怪獣島を爆破してあいつらを抹殺しようとしたのが人間の仕業ってことに気づいていないんだろうか?」
「真田、お前・・・・」
「いや、ちょっと気になってるだけさ。コントロールはうまくいくよ!」

その時1台のジープが真田達の前に停まった。
「真田さん、先ほどディオガルス誘導ヘリから連絡が。ディオガルスは伊勢湾に入ったそうです。」
「よしっ、おれ達も最終チェックにかかろうぜ!」
真田は自らの不安を吹っ切るように金城の肩を叩いた。


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