五条大橋上空のヘリ
「真田さん、中島少佐からディオガルス誘導部隊がA地点に到達したとの連絡が入ったそうです。」 「よしっ、金城、こっちも『強化コントロール誘導作戦』開始だ!」 「アイアイサー!」 金城がすばやくコントロール装置のキーを操作する。 バリバリバリッ! コントロール装置の受信機が取りつけられたゴジラの頭部に数条の電撃が走った。 ギャォォォォォーーーーッ!! それはまさに「飛び起きた」という表現が正しかった。 起きあがったゴジラは正気を確かめるように頭を数回振ると、注意深く辺りをうかがった。 「電撃で気絶してたのに、また電撃で起こすなんて何だかかわいそうね。」 「菖蒲さん、この際贅沢は言ってられませんよ。 ゴジラちゃん何が苦手って電気が大嫌いだからな。」 「そういう意味じゃディオガルスの相手には一番不向きだったかもな。 さあ出発しようぜ。」 が、ゴジラは向きを変える際に加茂川の土手に足を滑らせまともに五条大橋の上に倒れ込んだ。 橋は轟音と共にこなごなに潰れた。 「あっちゃぁ!」 「バカ、何やってるんだ、下手クソ!」 「無理いうなよ。お前が急がせるからオート・バランサー省略してマニュアル操作なんだから。」 そう言いながらも金城の指はすばやくキーを叩いている。 再びゆっくりと起きあがったゴジラはどこかおぼつかない足どりで進み始めた。 「後で京都市から目玉が飛び出るような請求書が届わよ。」 「冗談は止めて下さいよ。こちとら怪獣島が無くなって半分失業者なんだから。」 「アラ、金城くんほどの才能だったら、この一件が片づいたらウチの大学での再就職口紹介するわよ。」 「えっ、本当ですか?!おれ、がんばっちゃおうかなあ。」 ちょうどディオガルスの巣の前までやってきたとき、真田は大田原大佐に連絡を入れた。 「ゴジラに巣を破壊させますか?」 「いや、今は止めておこう。万が一誘導作戦中のディオガルスを刺激したりするとまずい。」 「了解!このまま誘導をつづけます。」 宝ガ池駐屯地 その巨獣の姿が山陰に見えなくなったとき隊員達の中から大歓声が巻き起こった。 「たっと・・・京都戦が終わったな。 爆破作業班は直ちにディオガルスの巣に向かえ! しかし・・・こりゃあ後始末が大変だぞ。」 大田原大佐が見上げた夕焼けの空には主を失った巣がぽつんとそびえ立っていた。 ほぼ同時刻 遠州灘10km沖合いを進むディオガルス誘導部隊ヘリ機内 「少佐、ゴジラの誘導が始まったようです。」 「上手くいっているのか?」 「ええ、どうやら順調の様です。」 ふと腕時計を見る少佐。 「このままだと後2時間もすれば神無島だ。待ってろよ、ディオガルスめ!!」 少佐はそうつぶやくと先頭をきる2機に導かれ、白波を立てて夕陽の太平洋を進むディオガルスを見下ろした。 が、それから1時間後、御前崎の沖合いを誘導中にそれは起こった! 「少佐、『空船シュミレーター』とディオガルスのシンクロ率が急に低下し始めましたっ!」 「何ぃ、機械の故障か?!」 「1番機ヘリからも入電!あ、2番機からも・・・!どうやら故障では無いようですが。」 「今のシンクロ率は?!」「75%・・・74・・・現在72%。まだ低下して行きますっ!」 「1番機が指示を求めていますが。」 「何てことだ、神無島はもうそこだって言ってるのに! 1番機にはそのまま誘導を続行せよと送れ!至急ゴジラの誘導ヘリと連絡を!!」 「ラジャ!」 ゴジラ誘導ヘリ機内 「ええ〜〜っ、シュミレーターとのシンクロ率が?!!」 「いったいどうなっているんだ?!!もうシンクロ率は60%を切ったぞ! あと30分もすれば島に着くと言うのに!!」 三人は揃って阿須美を見つめた。 「私にも・・・わかりません!確かにかってはディオガルスは空船で小笠原まで導かれたのですから。」 「行く先が小笠原じゃないからか?!」 「それは関係ないはずです!」 「じゃあいったい何で?!」 「おいっ、何とかしろ!!」 スピーカーからは興奮した少佐のわめき声が空しく響きわたる。 ディオガルス誘導部隊ヘリ機内 「だめです、少佐!シンクロ率が50%を切りました!!」 「1番機から入電!ディオガルスが遅れ始めていると!!」 「万事窮すかっ!!」 思わず頭を抱え込んだ少佐が見たのは日没直前の海で無数の電撃を走らせながらその鶏冠を広げようとする獣王の姿だった! 「まずい!静電砲だっ!!全機離脱!!!」 バリバリバリバリッ!!! 1番機と2番機は避け切れずに一瞬にして消滅した。 「ディオガルス、海中に潜ります!ロスト!!」 「くっそぉぉぉぉ!!・・・・横須賀の海防へP3Cと潜水艦の大至急派遣を要請しろっ!! ディオガルスを刺激しないように海防の護衛を断ったのが裏目に出てしまった!!」 少佐は悔しげにヘルメットをヘリの床にたたきつけた。
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