ゴジラ誘導ヘリ機内

「駿河湾沖合いで『空船シュミレーター』の誘導を断ち切ったディオガルスは先行するヘリ2機を静電砲で粉砕、そのまま海中に没したそうです。」
その知らせを聞いた阿須美は顔をおおってわっと泣き出した。
「阿須美さん、何も君のせいじゃ・・・。」
「いいえ、私のせいです。もしあの時私が命に代えてでも怪獣島の爆破を阻止していれば。」
「しかし・・・君はその後十分がんばったじゃないか。」
「おじいさまの命を、そして京都の街を差し出して・・・そしてまた新たな犠牲者まで出して結局はディオガルスを見失って。私がしたことはいったい何だったんでしょう?」
そこまで言うと阿須美は再び泣きじゃくり始めた。
菖蒲は彼女の細い肩に手を伸ばし抱き寄せた。
「阿須美ちゃん、歴史に『もし』は無いのよ。
 勢いよく流れ始めた歴史の流れは人一人でくい止められるものじゃないわ。」

「しかし・・・何故『空船シュミレーター』がいきなり無効になったんだ?
 何がディオガルスを呼んだんだろう?
 まさか・・・ディオガルスが呼び寄せた魔?!」
金城の独り言のような呟きを聞いていた阿須美が涙でくしゃくしゃになった顔を上げた。
「空船の調べを破れる魔など存在しません!」
「じゃあいったい何が起こったんだら?平安の世には無かったもの・・・・・そっかぁ!!」
「何よ、それって?!」
「電波さ!あるいは電磁波かもしれない!」
「何の話だ?」
「京都のことを思い出してみろ。
 電気や電波、電磁波を自由に操るディオガルス。
 平安の世には雷以外にそれは無かったはずだ。
 じゃあこの現代はどうだ?無数の電波が飛び交い、電磁波にあふれ返っている。」
「・・・関東か。」
「そうだ、真田。ディオガルスは静岡から上陸して西進した。
 関東は全くの日常通りの生活が続いているはずだ。
 そこに飛び交う電波、電磁波。ディオガルスはこれに反応したのに違いない!」
「つまり・・・東京がディオガルスを呼び寄せたって言うんだな。」
「平安の世に生まれたヤツにとって自分とは違う電波・電磁波はいわば『敵』なんだよ!
 多分京都に巣をはって魔を集めようとしたディオガルスの手段は電波や電磁波じゃ無かったのかな?
 だが現代では無数に飛び交うそれに阻まれて目的は達せられなかった。
 だから首都東京を潰し、自分にとってじゃまなそれらの根本を断ってから魔を呼び寄せるつもりなんじゃ?!」
「関東に・・・いや、東京に上陸するって言うのか?」
「そうだ。間違いない。東京を壊滅させてそこに巣を張るつもりなんだ!!」

「ふむ。話はわかった。
 ディオガルスは東京に上陸してそこに巣を張ると言うのか。
 じゃあどうする?首都の電気をみんな止めろというのか?
 すでに海防が迎撃戦の準備を整えつつある。」
大田原大佐も混乱していた。
確かにディオガルスを見失ったのは首都の喉元ではないか。
「電磁波を操り光線兵器の軌道すら曲げてしまう相手に何ができます?!
 関ヶ原で、琵琶湖で、あなただってご覧になったはずです!
 近代兵器を全て無力に変えてしまう相手とどうやって戦うんですか?!」
「じゃあどうするべきだというんだ?」
「ゴジラを・・・誘導中のゴジラをもう一度ディオガルスにぶつけるですっ!」
「ゴジラを?二匹が争った京都がどうなった?!あれが東京だったらあの程度では済まないぞ!
 首都での怪獣決戦など考えたくもない!!
 予定通りゴジラは日本海溝まで誘導して放ってくれ、いいな!」


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