未だ海底火山の活動が沈静化しないまま防衛隊による怪獣島爆破作戦の検証、すなわち怪獣捜索が直ちに始められた。
結果は・・・怪獣たちが島外に逃亡した可能性はゼロ。 指揮官、中島少佐は自慢げに「作戦成功」を報じていた。 そのころ阿須美と真田は鵺島(ぬえじま)の断崖絶壁の岬に立っていた。 「この下に獣王とやらが眠っているのか?」 「いいえ、私たち巫女の家に生まれた者はここに立てば獣王の“気”を感じることができるのです。」 ゆっくりと両手を海にかざす阿須美。 「!!!・・・いない!!まさかもう移動したというの?!!」 「何だって!移動?どこへ?!!」 「獣王が向かう先は都しかありません! 真田さん、京都へ急ぎましょう!!」 「そのディオガルスってのが京都へ向かうっていうのか?」 「京都には“光明”の血をつぐ最後のお方が。」 阿須美の話はこうだった。 古来都には「光明」と「影」という二つの家系があり、物の怪から朝廷を守っていた。 「光明」は退魔師あるいは陰陽師となって直接物の怪を退治、封印する家系、一方の「影」は地方に散らばり封印した物の怪を監視する役割だったのだという。 真田は当然ながら阿須美の話が信じられなかった。 阿須美は言う。 「あなた方だって50年前までは怪獣の存在を認めなかったではないですか。 獣王は1000年以上前からここに封じられていたんですよ!」 真田は渋々阿須美に付き添って京都へ向かう。 その「光明」の家は京都の一角にあった。 彼らを迎えたのは病床についた老人だった。 「阿須美か・・・、大きくなったのぅ。」 「おじいさま、お体の具合は?」 「わしはもう永くはあるまい。 わしで光明の血も絶えることになろう。 しかしお前がわしを尋ねてくるとは・・・・やつが目覚めたじゃな?」 「申し訳ありません。力は尽くしたのですが。」 「お前のせいではあるまい。 もはや光明の血筋の者は残っておらん。 お前にはわしの手足となって動いて貰わねば。 まずはこのお札を京都の丑寅の方角に貼ってくるのじゃ。」 「お札・・・ですか?」 「うむ・・・、結界じゃが1000年のうらみに燃えるやつには効かんじゃろう。 しかし同時にこのお札には“龍返しの術”を施してある。」 「龍返しの術?!!」 真田は阿須美をこづく。 「何だよ、“龍返しの術”って?」 「物の怪に龍を式として戦わせる秘術です。」 「・・・・聞かなきゃよかった。」 「しかし、龍はどこに?」 「手負いで傷を癒しておる。確か・・・ゴジラとか世間では呼んでおるがの。」 「ご、ご、ゴジラだってぇ?!!」 「お前さんたちが起こすまで、ゴジラといえど我らが封印した龍の一匹に過ぎなかったのじゃ。 核のせいで元来の恨みは忘れてしまったようじゃがのう。」 「ゴジラがまだ生きてると? 第一ゴジラをこんな紙切れで操れるっていうんですか?」 「わしらの血筋はそうやって朝廷にお仕えしてきたのじゃ。」 「阿須美よ、あるいは龍返しの術が破られることもあろう。 お札を貼ったらもう一度鵺島の空船(うつろふね)の遺跡に戻るのじゃ。」 「鵺島の・・・あの遺跡で何をしろとおっしゃるのですか? 阿須美は何も聞かされておりません。」 「お前の血が全てを教えてくれるはずじゃ。 急げ、やつはもうそこまで来ておる!」
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