ディオガルスといえど黙ってやられていたわけではなかった。
動物本能と自らを目指して飛んでくる武器をそのまか不思議な電磁界で探っていたのだった。
そしてついにその反撃が始まった。

上空P3C機内

ソナー要員が甲高い声を上げた。
「これはいったい何だ?!
 機長、ディオガルスの電磁波パターンが大きく変わり始めました!」
「電磁波のパターン?何のことだ?!」
「分かりませんが・・・きっとやつめ何かを始めるつもりじゃ。」
その時海中の状態をモニタリングしていた別のソナー要員が声を上げる。
「アスロック魚雷が突然迷走を始めました!やつには命中していません!!」
「何が始まったんだ?!!」

旗艦「あけぼの」艦橋
「何っ、魚雷が外れているって!空防にさらに爆雷攻撃を要請しろ!!
 海面に顔を出させないとうつ手がないぞ!!」
勝利を確信した歓声にわき返っていた艦橋の中に一瞬静寂が訪れた。

ディオガルスの反撃は始まったばかりだった。
B1型爆撃機が爆雷投下のために降下してきた時を待っていたかのように浮上したディオガルスは激しくたてがみを逆立て、鶏冠を広げ始める。
「しまった、静電砲だ!全機離脱!!」
動きの俊敏なFはまだしも、3機の爆撃機はあっというまに静電砲の悪魔のきらめきに包まれ四散した。
そして最終防衛ラインに陣取った艦隊からのハープーンミサイルが到達するより早く、海中にその姿を没していた。
目的を見失ったミサイルは次々と失速し水柱と共に海上に落下していく。

横須賀海防中央作戦司令室
ゴジラの誘導を終えた真田達が到着したとき、そこには不思議な静寂が満ちていた。
先ほどまであれほどわき返っていた室内には声を発する人もなく、ただただ全員が諦めの表情でスクリーンを見つめていた。
中島少佐の姿を見つけた真田が彼に駆け寄る。
「どうなったんだ、ディオガルスは?!」
「やつの操る電磁界のせいで魚雷がロックできなくなった。
 魚雷がダメで、やつに海中を進まれれば海防さんには手も足も出るまい。」
「やっぱりか。」

旗艦「あけぼの」艦橋
「ディオガルス接近、距離5000深度150m!」
「機雷敷設艦『あおば』に至急前方500mの地点に水圧感応型機雷の敷設を!
 『あけぼの』以外の艦船は湾内に下がらせろ!」
「艦長、まさか最終防衛ラインを放棄するんですか?!」
「そうではない!ディオガルスが艦隊のど真ん中に浮上したらどうなる!
 近距離からのこの『あけぼの』の主砲で一気にとどめをさしてやるのだ!」

浦賀水道の最後の守りとなった鉄の城は全ての主砲・副砲を外洋に向けたまま浮かんでいた。
「距離900、800、700、600・・・・・・」
ズン!!!という海の底から響いてくる震動。
いくつ盛り上がる水柱の間から怒り狂った獣王は再びその姿を海上に現した。

「撃てぇぇぇ!!!」
巨砲が一斉に火を噴く!
が、人々はその瞬間信じられないものを見た。
ディオガルスに向かって放たれた巨大な砲弾はその標的に到達する前に次々と炸裂したのだった。
「何っ?!!・・・撃て、撃てぇぇぇ!!」
その砲撃は巨艦の悲鳴の様にも聞こえた。
ディオガルスは微動だにせず砲弾を払い落とすとゆっくりと鶏冠を広げ始める。
無数の電撃が走る。
「万事窮すか!!」
ズゴゴゴゴォォォォォォーーーーーーッ!!!
その巨大な鉄の城のシルエットは静電砲の閃光の中でぐにゃりとゆがみ、次の瞬間には無数の破片となって飛び散り消滅した。

横須賀海防中央作戦司令室
「わぁぁぁぁーーーっ!」
司令室の中に悲鳴のような絶叫が響いた。
「バリア?!バリアなんて物が存在するのか?!」
金城がぽつりと言った。
「ディオガルスのやつ・・・電磁のシールドで砲弾の信管を狂わせたんだ。
 もはやあいつには砲弾すら効かないだろう。」

ディオガルスは戦意を喪失した艦隊には目もくれずどうどうと帝都の懐に向かって侵攻を始めたのだった。


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