「現在ディオガルスは有楽町マリオン横を時速40kmで侵攻中!」
「やはり・・・皇居では無かったか。」 大田原大佐はほっと溜息をついた。 その時菖蒲が突然大声を上げた。 「そうだわ!!東京ドームよ!!」 「菖蒲さん、何で東京ドームなんですか?!!」 「airZ-WAVE計画よ! 東大で研究中の新世代のモバイル専用インターネット通信システム。 ウチの大学からも数人参加してるから聞いたことがあるの。 確かそのアンテナは東京ドームに取り付けられてるはずだわ!!」 「ドームだとしたら・・・あそこは文京区の避難場所に指定されている筈だ。 ヘリを先回りさせて住民の避難を!! しかし、それならそのairZ-WAVEとやらの電波を止めさせるわけにはいかんのかね?」 「大佐、目標を見失わせて別のターゲットを探して都内を徘徊されるよりはましでしょう。」 「それはそうだが・・・・。」 「ディオガルス、中央線沿いにお茶の水方面に向かいます!」 「ドームからの住民避難は完了!!」 「できるだけドームから離させろ!」 獣王はその巨大なドームの前に立っていた。 (コイツガオレノジャマヲシテイル・・・・・) ゆっくりと広がる鶏冠、逆立つ鬣。 バリバリバリバリッ!!! 静電砲の第一撃はその開閉式の天井を粉々に吹き飛ばした。 そして第二撃!! ドーム全体がその閃光の中に飲み込まれていく。 そして「全て」が終わったとき、そこには残骸の山が横たわっていた。 グォォォォォォォ〜〜〜〜〜〜ッ!! 天高く吠えたディオガルスに応えるように、天からの一筋の雷光。 そして地鳴りと共に残骸の山の中から突き出してくる巨大な青白い巣。 獣王の姿がその中に飲み込まれると同時に巣はぼんやりと発光し、それとは逆に辺り一面はいきなり停電し真っ暗闇となった。 「何だありゃあ?!!」 「京都の御所に生えたヤツと同じだあ!」 「すごくでっかい!!」 自衛隊の誘導でドームから避難する住民達はみな足を止め振り向いた。 立川基地でノイズ混じりのモニターでこの様子を眺めていた人々からは落胆の溜息が漏れていた。 「また振り出しに戻ってしまったな。」 もっとも攻撃の手だてもなく見てるしかないとは振り出し以前かもしれんが。」 真田は思わず前に一歩踏み出していた。 「大佐、手だてはあります!ゴジラを、ゴジラをもう一度ディオガルスにぶつけるんです!」 「まだそんなことを言ってるのか?!第一日本海溝に放ったゴジラが今いったいどこにいるか分かるのか?!!」 はき捨てるような中島少佐の言葉に真田は答えられなかった。 「前よりも・・・・ずっと大きいわ。ディオガルスのやつ、今度は本気って感じね。 阿須美さん、ディオガルスが魔を呼び集めるとき、どんなことが起きるの?」 「まずは『小魔』がうごめき始めると伝えられています。」 「『小魔』?」 「『小魔』はそれ単独では行動しない下等な『魔』です。 『魔』が封印されれば同時に『小魔』は姿を消したのだそうです。」 「つまり『魔』の封印が解かれれば『小魔』もってこと?!」 阿須美は黙って頷いた。 「いくら獣王ディオガルスが呼びかけようと『光明』が施した封印は簡単には解けないでしょう。 しかし元来それら自身が封印されていない『小魔』は先に目覚めると伝えられています。」 「つまり・・・その『小魔』が現れるところに『魔』が出現すると?!」 「『魔』は間違いなく『くに』を滅ぼします。 獣王ディオガルスがやまとの国から一番離れた小笠原の地に封印されたのは、ディオガルスが他の『魔』を呼び集める『魔』であったからなのです!」
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