「なるほど、話はわかった。」
全員が拍子抜けするほど大田原大佐はあっさりと頭を縦に振ったのだった。 「で、神無島に誘導装置を作ることは可能かね? 時間の猶予は全くと言っていいほど無いのだ。 孤立した避難民達がパニックに陥らないうちにだ。」 「大佐、さっきもう一度問い合わせてみたんですけれど、それだけの有効距離を持つものを作るのは簡単じゃないらしいんです。 ただもし既存の大型の電磁波発生装置のような物があったらそれを流用して近距離用のものならできるんじゃないかって。」 「う〜む、そうか。」 大佐はしばらく腕組みをしていたがはたと何かを思いついたかのように金城に向かって話し始めた。 「金城君、これから直ちに御殿場基地に飛んでくれ。そこにAサイクル光線車がある。」 「Aサイクル光線?!!」 「君たちがまだ生まれる前の話だ。 かって特殊な電磁波で宇宙怪獣キングギドラを操るX星人は、ゴジラ、ラドンも同じく電磁波で操って地球を攻撃してきた。 その時X星人の電磁波を遮ったのが『Aサイクル光線』。 当時は遮ったのだとばかり想われていたのだが、『カウンター・ウェイブ・テクノロジー』が発表された後で、御殿場基地に残る2両のAサイクル光線車を整備して実験したところ、Aサイクル光線はX星人の電磁波に対する『カウンター・ウェイブ』光線だったというのだ。 もちろん当時はたまたまの偶然で発明されたんだろうがね。」 「そんなものがあったのか?」 「むろんそれが使い物になるのかはまだわからん。 ただその理論が正しいなら、新たな魔が日本各地に出現したとしても現地で足止めできるはずだ。 これ以上首都にやつらを入れるわけにはいかん! で、金城君、直接君が行ってAサイクル光線車を改造する指揮をとって欲しいのだ。」 「お言葉はうれしいのですが、そういうことならairZ-waveの研究者の方が。」 菖蒲がその時むっとした顔をしたことに金城は気づかなかった。 「いや、金城君、今回は我々防衛隊の臨時技官として行って貰いたいのだ。 「臨時技官?防衛隊の??」 「airZ-waveの研究者はディオガルスのことは知らない。 君になら任せられる。いや、君にしかできないと信じている。」 御殿場基地 ヘリの中で金城はぶつぶつ独り言を呟いていた。 何故か菖蒲は同行しなかったのである。 恋人との再会シーンをおれに見せないための気遣いか? どっちにしろおれは間抜けなピエロだ。 格納庫の中には30年前に作られたとは思えないほどの状態を保った2両のAサイクル光線車が出撃を待ち受けるかのように静かにたたずんでいた。 彼を案内してくれた若い技官は言う。 「何せ一度しか実戦に参加していませんからね。ほとんど新品みたいなものです。 もっともベースが61式ですから、74式や90式に比べると乗り心地や最高巡航速度はかないませんが、まだまだやれますよ、こいつは!」 金城が技官からAサイクル光線の説明を受けている間に、「かの相手」が到着した。 すらりと長身でスーツを着こなし、ちょっときざっぽいチタン製の縁の眼鏡。 確かに菖蒲さんにはこんな男の方が・・・・ 「金城さんですね?西都大学 電波工学教室の平山です。 菖蒲からさんざんあなたの自慢話は聞かされましたよ。」 「自慢話?いやぁ、そんなたいしたことは・・・・・。」 沖縄男児、何をいじいじしてるんだ! 金城は思いきってこう切り出した。 「彼女と・・・結婚なさるんでしょう?」 平山は一瞬「えっ」という顔をしたが、すぐに大笑いを始めた。 「菖蒲のやつ、そんなことまで喋ったんですか。あはははは、まいったなあ。 これが結婚を申し込んでふられた男の間抜け顔です。よ〜く見てやって下さい。」 こいつ、何を言ってるんだ?!「結婚を申し込んでふられた」って?? 「ふられて落ち込んでたらいきなりの電話。 もしや心変わりでもしたのかと期待して電話に出ればやれ『airZ-waveの資料は持っているか?』だの『対怪獣兵器作るのを手伝え』だの。 彼女の性格はわかってたんですけどね、あはははははは・・・。 まあそんな話は後です。作業を急ぎましょう!」 まだ望みはあるのか? 金城は心の中にどんよりと立ちこめていた雲の中から少し明かりが見えてきた気がした。 「いやぁ、驚きましたよ。 このAサイクル光線の発生装置、アナログとデジタルということを別にすればairZ-wave発信器と基本的なメカニズムは同じです。 30年以上も前にこんな物が作られていたなんて。」 「全くですね。こことここに増幅器を、ここには加速装置を、あと・・ここに変換器をつければ。 あとは現場で調整しながらやってみるしかないでしょう。」 うんうんと二人の会話を頷きながら聞いていた主任技官がさっと手を挙げた。 「技術班、かかれっ!!今夜は徹夜だぞ!」
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