立川基地

大田原大佐の部屋のドアがノックされる。
「お休み中の所を申し訳ありません。」
「かまわん、何かあったのか?」
「秋田県鹿角市にゲジゲジのバケモノが現れたと。地元の警察から防衛隊に出動要請が。」
「ゲジゲジの?もう次のが出おったか。で、どうした?」
「当直士官の判断で弘前の第42師団が現場に向かっております。」
「よかろう。盛岡の第35師団も応援に回らせろ。
 気の毒だが巫女さんにも起きて頂こうか。」

コンコンコン・・・・
控えめにノックされたドアの音に阿須美は目覚めた。
「阿須美さん、申し訳ありませんが司令室まで。秋田にゲジゲジのお化けが。」
「ゲジゲジ?あ、はい、すぐ行きます。」
横の菖蒲が安らかな寝息をたてて眠り込んでいることを確かめた阿須美はその生まれたままの裸身をシーツの上に起こす。
もう一度菖蒲が深い眠りの中にあることを確かめた阿須美は大きく背伸びをする。
カーテンを通して部屋の中をかすかに照らし出す月光の中で浮かび上がる蒼白の裸身。
そのまだ幼い膨らみの下のアバラにぱっくりと三条の割れ目が走る。
そう、それはまさに魚の鰓のようだった。
真田に見せられなかった「影」の「徴」。
阿須美が腕を下ろすとその割れ目は何事も無かったように閉じ、見えなくなっていく。
手早く下着をつけ、シャツを羽織った彼女は、菖蒲を起こさないようにドアを開け廊下へ出た。

「秋田に・・・」
「脚邪連です。おっしゃとおり巨大な肉食のゲジゲジです。脚邪連は婆羅護吽に寄生する『小魔』。」
「バラゴンというとあの地底怪獣か?」
「婆羅護吽即『魔』というわけではありません。
 彼等はいくつかのグループに分かれて古来からこの『くに』の地中深くに住んでいたのです。
 中には『神』として祭られているものもありますが、またあるものは『魔』となって地上に現れて人々を襲いました。
 秋田の婆羅護吽はそんな中の1匹でしょう。」
「まだバラゴンは現れていないようだが。」
「地震は起こっていませんか?移動する地震が起こったらそれが婆羅護吽が移動を始めた証拠です。
 脚邪連達は婆羅護吽が移動を始めるとバラゴンの体に戻るはずです。」
「肉食のゲジゲジを連れたバラゴンがやはりあの巣を目指すと言うのだな。」
「空を、地を。獣王は全てを支配するつもりなのです!」


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