伊豆半島南30km海域。
その日の「怪獣捜索」を終えた駆逐艦「大鵬」は横須賀への帰路についていた。 その甲板にて・・・ 「おいっ、あれは何だ?あの青白い発光は!」 次第に近づく発光体。 「レーダー、何も映ってないのか?!」 「それが・・・急に・・・故障かな?」 「ソナーはっ?!!」 「スクリュー音はしません!」 「怪獣?!まさか!!総員戦闘配備につけっ!!」 「主砲回せっ、目標は右舷の発光体!!」 それに呼応するかのように発光体は無数の電撃を発するようになる。 「雷?!」「海から発する雷があるかっ!!!」 次の瞬間「大鵬」は発光体から発せられた閃光に包まれた。 中部電力、静岡西変電所。 「おいっ、今日どこかで大きなイベントでもあったっけ。」 「○○ホールで人気歌手の、なんとかっていうののコンサートが。 でもどうかしたのか?」 「電力の消費量が、ほら。」 すごい勢いで加算されるデジタルのゲージ。 「異常だな、この地区の全ての電化製品のスイッチを同時にいれたってこうはならないぞ。」 次の瞬間、いきなりの暗転。 「て・・・停電だ。」 「ばか!ぼさっとしてる場合か!!点検急げ!!!」 その瞬間静岡市内は一斉に停電。 大混乱となった。 東京駅発、下り新幹線「ひかり263号」車内。 真田、阿須美、金城、そして菖蒲はその乗客となっていた。 疲れはてたのかすでに阿須美は眠りこけている。 「あなたたちのおかげで素晴らしい成果の調査旅行だったわ。」 「この話、信じて貰えると思います?」 「『仮説』は『仮説』でいいのよ。 でも考えれば考えるほど逆に信じられなくなって来たわ。」 「何でですか、菖蒲さん?」 「考えてもみて。仮にも平安京時代なのよ。 コンピューターなんてもちろん無い。 そんな時代の人がどうして人間に聞こえない音のでる楽器が作れるの?」 「それじゃあ・・・」 「作り話じゃない。現に空船はあそこに存在し構造的にそういう楽器なのは事実だわ。だとすれば・・・」 「だとすれば?」 「あれを作ったのが『人』じゃないってことよ。」 「それって宇宙人ですか?」 「何でも宇宙人のせいにするのは歴史学の世界じゃ許されないわ。 しかも獣王だなんて。 確かに私たちがいるこの世界に怪獣は実在するわ。 でも昔からの鵺だとか鬼ってのはあくまで想像上の生き物だった。 それが『実在した』って認めたら歴史は大きく書き換えなければならなくなる。」 「そう言われてみれば、怪獣島っておれたちが知ってる表の歴史と闇の歴史を隔てる扉だったんだな。」 「そういうことになるのかもね。」 「その開いてしまった扉をこの子は一人で必死にもう一度閉じようとしてるんだな。」 と、その時まで安らかな寝息をたてていた阿須美が、はっとして顔を上げる。 「まさか・・・・、もう?!!」 「どうしたんだ、阿須美さん?」 その時車内に流れるアナウンス。 「JR東日本の車掌、柏原です。 お急ぎの所まことに申し訳ありませんが、この列車は次の三島で緊急停車します。 東海地方で大規模な停電が発生したとの・・・・」 「来た、ヤツがっ!!」 唇を噛みしめる阿須美。 海辺でバーベキューの用意をしていた若者のグループ。 街の明かりが一瞬で消えたことに驚く。 「うわっ、停電だぜ。」 「でも見てよ、星があんなにくっきりと。何だかロマンチックだわ。」 「なんだかおれ達漂流したみたいだな。あっはっはっ・・・」 彼らの背後の海から近づく青白い発光体。 彼らが気づいて振り返ったそのとき、全身を怪しく発光させた「獣王」がついにその姿を現した。 「か・・・、か・・・・・怪獣だぁぁぁぁぁ!!!」 「グウォォォォォォーーーーー!!」 一声天に向かって咆吼した「獣王」は一瞬身をかがめると、一目散に逃げ出したグループの頭上を遥か高く飛び越え市街地におどり込んでいった。 防衛隊本部。 「少佐、東海支部から入電! 2000過ぎ、駿河湾から怪獣が上陸、市街地を破壊しながら西へ向かっていると!」 「何ぃっ、怪獣だと?!!ゴジラか、アンギラスかっ?!!!」 「それが・・・我々の未知の怪獣との・・・」 「東海の部隊に発砲許可を出せ!!」 「しかし長官の許可が・・」 「黙れっ!これは怪獣掃討戦の一貫だ。指揮権はおれに一任されている!!」 「ですが静岡市を中心に大規模な停電が起こって市街地はパニック状態で近づくことも・・・!」 「ちぃっ!!ヘリを回せ!おれは現地へ飛ぶ!! それから浜松の第十一部隊を国道1号沿いに東進させろ。犬山の戦車部隊も後方支援に出撃準備を!急げっ!!」
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