寒河江市郊外国道112号線
勇壮に居並ぶ九○式戦車とメーサー戦車の隊列に銀色に塗られ鈍い輝きを放つAサイクル光線車が合流した。
まわりにあっというまに隊員達が駆け寄り人垣ができる。
「すごいなあ、よくこんな状態で残ってたなあ。」
「61式がベースか。」
「これでバラゴンをおびき寄せるんだよな。」
「何だよ、このスピーカーは?!進軍ラッパでも鳴らすのか?」
「あははははははは・・・」
ハッチが開き、隊員服に身を包んだ金城が降り立つ。
「中島少佐は?」「あそこの先頭指揮車の側に。」
指揮車のまわりには中島少佐をはじめ、各部隊の隊長達が集まっていた。
「ご苦労だった、金城君。」
「急いだんですが・・・・。平山さんが御殿場基地でもう一両の完成を急いでいます。」
「敵の足が思ったより早い。贅沢は言えないさ。それに夜戦は避けたいからな。
さっきバラゴンの侵攻を示す震源がここ舟形町で観測された。
我々はここ国道112号線を防衛ラインとする。
部隊を3つにわけ、正面主力はここ112号線、
残りはそれぞれ458号線と287号線に展開して側方からの援護を。
バラゴンの削岩機のような体を狙ってもムダ弾になる。
やつの弱点はあの大きな耳だ。」
部隊長達は唇を真一文字に結び、黙って頷く。
「地面を掘り始めたら地中に完全に没するまで約3分。
万が一地中に逃げ込んだら対戦車ヘリからのナパーム弾一斉攻撃を。
穴の中で『壷焼き』にしてやる。」
隊長達の中から笑いが漏れる。
「ディオガルスの巣のまわりは完全に奴等の『占領下』だ。
これ以上のやつらの援軍は許されない!
断固としてここでくい止める。いいな!!」
「あれっ、真田、お前も来てたのか?阿須美ちゃんはおいてきたのか?」
「ああ。そういえばお前こそ『菖蒲さんの恋人』はどうだったんだよ?」
「ば、ばかっ!。おれは防衛隊の臨時技官で今は作戦行動中だ。私語は厳禁だぞ!!」
二人は顔を見合わせてぷっと吹き出した。
「各員乗車!!!」
号令と共に各隊の隊長達が散っていく。
「じゃあ真田、後でな!」
「おうっ、頼んだぞ、金城!」
「まかせときって!」
二人はがっしりと腕を組んだあと、それぞれの方向へ走り出した。
巨大なトラックの荷台部分を改造した戦闘指揮車の上では隊員達があわただしく動き回っている。
「少佐、地下震源は真正面、距離およそ3000!」
少佐はうんと頷いた後、マイクを取った。
「Aサイクル光線発射!!」
Aサイクル光線車の砲塔の電光管がぼんやりと発光し、次の瞬間、砲の先端のコイル状のアンテナが白熱しながら電撃を発する!
ピィィィィィィーーーッ!!!
その光線車の中ではいくつものモニターを見回しながら金城が忙しくダイヤルを操作している。
「カウンター現象発現!パワー上げます!!」
「少佐、バラゴンの侵攻スピードが徐々に落ちます。」
中島少佐は黙って前方の「まだ見えぬ敵」を凝視している。
「パワー、80%、83、86、90、95、98・・・・100%!カウンター・ウェイブ完了!!」
金城の前の、絡み合う複雑な2つの波を示していたモニターの一つには今や完全な「直線」が描かれていた。
「バラゴンの侵攻が止まりました。距離、約2000!!」
指揮車の上の隊員達からわあっと歓声が上がる。
「まだだ。これからが始まりなんだ。さて、どう来る?んっ、あれは?!!」
双眼鏡を眺めていた少佐は「それ」に気づく。
「対戦車ヘリより入電!!地中からゲジラの群が出現!!」
「巫女さんの言っていた通りだな。ヘリ部隊、構わんからその『露払い』共をけちらせ!!」
「ラジャ!」
3機づつ組になったAH-1S対戦車ヘリが20ミリ機関砲をはでに乱射しながら地の底からわき上がるように出現してきた脚邪連の黒い塊に向かって急降下していく。
直撃を受けた脚邪連達は一瞬にして粉々になって吹き飛ばされていく。
そしてTOW(対戦車ミサイル)の白い航跡、閃光、轟音・・・・
もうもうとして立ちこめた爆煙が消えるころ地上を蠢くものは1つも無くなっていた。
「ゲジラ排除、完了!!」
指揮車の上ではまた歓声が上がっていた。
「金城君、『露払い』の始末は終わった。第二段階だ!」
「空船シュミレーター、スイッチオン!パワー上げます!!」
Aサイクル光線車の車体後部に取り付けられたいくつものスピーカーが一斉に「シャーーーッ」という音を発し始める。
間もなくそこに居合わせた者たちは地の底から響いてくる震動を、そしてそれが徐々に強まってくるのを感じた。
「少佐、上がってきます!!!」
「各車、おれの命令があるまで撃つな!」
ズズズズズズ・・・・・・
主力部隊の真正面の一角の地面に地割れが走り、ゆっくりとまるで小山の様に盛り上がる。
そしてちょうどその頂上からまるで温泉でもわいたかのように土砂が吹き出し始める。
ドドドドドドドド!!!!!!
その土煙のなかにぼんやりと光る黄色い発光!
「少佐、バラゴンの角だ!」「うむ。」
そして見る見るうちにその巨獣は地上にその上半身を現す。
大きな目がぎょろぎょろと動き、辺りの様子をうかがう。
まもなくその残りの下半身と長大な尻尾が地上に現われた。
その巨体をぶるぶると揺すって全身に降り積もった土砂を振り飛ばしたバラゴンはもう一度首を振って辺りの様子をうかがった後大きく耳を広げ咆哮した。
ギャェェェーーーーーーン!!!
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