立川基地
基地に戻った中島少佐たちは拍手で迎えられた。 少佐は小笠原大佐の前で姿勢を正し敬礼する。 「大佐、山形でのバラゴン迎撃作戦を終了しました。」 「うむ、よくやってくれた。金城君もご苦労だった。」 「他の動きは?」 「今の所報告はない。ただ・・・」「ただ?」 「巣のまわりの避難民がそろそろ限界だ。」 「何かあったんですか?」 大佐は大きな溜息を一つついて話し始めた。 「今日、避難所の1つで避難民達がパニックになったらしい。 護衛にあたっていた防衛隊隊員から銃を奪って外へ。」 「それで?!!」 「言うまでもあるまい。全員があのトンボの餌食になった。」 阿須美が悲しげに顔を背ける。 「このままだとあのエリアの各所で同じ事が起きるだろう。 しかも巣をあのままにしておけばまた別の『魔』が目覚める。 今回のバラゴンは何とか退けることができた。 だが次も勝てるとは限らん。」 「くそうっ!!何か打つ手は無いのかっ?!! 「金城君、Aサイクル光線で何とかならんかね?」 「Aサイクル光線車二両では何とも。 ディオガルスの『呼び声』を弱めることはできても問題の解決にはならないでしょう。」 司令室に重く暗い沈黙が立ちこめたその時だった。 「海防より入電!駿河湾に展開中の海防第一艦隊が浦賀水道方向に向かう正体不明の何者かをキャッチするも振り切られたそうです!!」 「しまった、そっちのやつが残っていたか!」 「第一艦隊の主力艦船はほとんど湾外に出ていて迎撃はFのみとのことです。」 「くそうっ、海防のやつら、ディオガルスに『あけぼの』をぶっ飛ばされてから腰がひけてるんだ!」 「口をつつしまんか、少佐! 海面に姿を現せば観音崎の海上交通センターのレーダー網で捉えられる筈だ。」 「阿須美さん!」 真田は図らずも阿須美を見てしまった。 それとほぼ同時に阿須美がはっと顔を上げる。 「違うわ、これは『魔』じゃない!!」 「東京海上交通センターより入電!観音崎〜富津岬ラインにゴジラ浮上!!」 「ご、ゴジラだってぇ?!!」 怪獣王は体を揺すって水しぶきをはねとばすと、久しぶりの空気を胸一杯吸い込み高らかに咆哮した。 ギャオェェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!! ぎらぎら光る目はまだ見えぬ『敵』を睨んでいるかの様だった。 まわりの物には目もくれずゴジラはゆっくりと湾内に歩を進めていく。 「やつめ、何故今頃のこのこやってきたんだ?!!」 「『龍返し』でもなく『怪獣コントロール装置』でもない。 だとすればそれはディオガルスに対するリベンジしかない!」 「リベンジ?!まだそんな甘っちょろいことを言ってるのか!」 「大佐、海防のFが上がりました。 横須賀の木村大佐が意見を求めていらっしゃいますが。」 「『防衛隊法』に基づいてとこたえておけ。 ゴジラが破壊行動を起こさねば攻撃する正当な理由はない。」 中島少佐が食い下がる。 「待って下さい、大佐までそんなことを! リベンジだろうが何だろうが、やつが上陸すれば被害は出ます!!」 「では聞くが、Fのミサイルでゴジラを倒せるのか?」 「うぐっ・・・・。」 「幸いにもディオガルスのために避難は済んでいる。 問題は巣の近くの避難所に閉じこめられている人だが。」 「十条駐屯地から入電、コウモリが一斉にエリアから離れ、東京湾方向へ飛翔したと!!」 「東京湾へ?!ゴジラに向かうつもりなのか?!!」 「よしっ!」 大田原大佐は力強く立ち上がった。 「至急十条駐屯地およびエリアのまわりにいる全隊員に避難民の救出に向かわせろ! トンボは夜は飛ばないはずだがくれぐれも注意するようにと!!」 「阿須美ちゃん、ゴジラは、龍は獣王に最後の決戦を挑むのね。」 「ええ、すでに術は切れていようと、これが本当の『龍返し』なのだと思います。 おじいさまがたとえ何度倒されようと命ある限り戦う怪獣王を『龍』に選ばれたのはこのためだったんですね。」 阿須美は目を閉じ「おじいさま」と小さく呟きながら手を合わせる。
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