「それはそうと、真田君、今回日本海溝から来たのは『魔』じゃなくってゴジラだったわけよねえ。
 ってことはアメリカの原子力潜水艦を襲ったのは・・・ゴジラってことになるのかしら?」
「それは・・・」
大田原大佐が「えっ」という表情で振り返り、真田の言葉を遮った。
「そういうことになるが。先を続けてくれ、伊集院さん。」
「どうも、大佐。確か潜水艦をいきなり襲ってきたんでしたよね。」
「米軍からの報告ではそうなっているが。」
「何故襲ったのかしら?」
「何故って・・・怪獣島に収容される前のゴジラは時に船は襲ってるからたまたまなんじゃないかなあ。」
いつの間にか中島少佐が彼の横に米軍からのファックスを手に立っていた。
「それは違うな、真田。米軍からの報告書によると『数十分追跡された後に撃沈』とある。
 『数十分の追跡』を『たまたま』とは言わないだろう。」
「じゃあ、ゴジラはやっぱり原潜を『狙った』のか。
 でも駿河湾に展開中の防衛隊の艦隊は襲わなかった。
 つまりゴジラが欲しがったのは・・・・」
全員が思わずごくりと唾を飲む。
「原子力・・・つまり、核!」
「ちょっと待ってよ!ゴジラは太古の恐竜が核のせいであんなバケモノになってしまったんでしょう?
 そんな生き物がなぜ自ら核を求めるの?!」
「核で生まれ変わってしまった体は核をエネルギーとして欲するのかも知れない。」
「よせやい、真田。仮にもゴジラは生物だぜ。機械じゃあるまいし、おれには信じられないな。
 第一怪獣島に収容してるときは『核エネルギー』の補充なんてしてなかっただろ?」
「確かに細胞からできた生物だ。
 だけど砲弾を跳ね返し、口から放射熱線を吐く生物に常識を当てはめるのは間違いだよ。
 あるいは『核エネルギー』はゴジラの『戦うためのエネルギー』なのかもしれない。」
「真田君、わからぬ話ではないが、君は推測だけでとんでもないことを言っとるんだぞ。」
「大佐、ゴジラの放射能測定をさせて下さい!
 京都の時と比較してゴジラの放射能が増加しているならそれは実証されます!」
「だが京都の時と違って気絶している訳では無いぞ。危険が大きすぎる。」
「我々が怪獣島にゴジラを収容して数年、ゴジラのことなんかまだほとんどわかっていないんです。
 もしゴジラがホントにそんな核を求めて彷徨く生き物なら、それは確かめておく必要があるんじゃないでしょうか?
 うまくディオガルスを倒していったんは海に帰ってもまた核を求めて日本各地の原発を襲うようなことがあったら。
 原発を数基ぶっ壊されたら日本はあっと言う間に人が住めなくなりますよ!」
「・・・わかった。真田君、君に任せよう。ただしゴジラがまずあのコウモリ共を片づけてくれてからの話だが。」

そうしている間にもモニターの地図上ではゴジラを示す赤い光点が確実に帝都の懐に向けて進みつつあった。


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