巣の周辺以外でも相変わらずあちこちの停電は続いている。
ゴジラに向かって飛ぶミレコウモリの後を追いながらぎりぎりの低空飛行で飛ぶ対戦車ヘリ。 月が出ている。 月をバックに不気味な真っ黒い群がまっすぐに怪獣王目指して飛んでいく。 「ミレコウモリの群は現在川崎市上空。その数は45羽。」 立川基地 司令室のスクリーンにはベイブリッジの主塔に取り付けられたカメラからの画像と、ヘリからの暗視カメラからの画像が映し出されている。 「45羽?おかしいな。確か報告ではコウモリは全部で46羽だったはずでは? 1羽足りないではないか! まさか巣に残ってるわけでは無いだろうな?避難にあたってる隊に確認させろ。」 「一部避難を完了した部隊との連絡では残っているのはトンボだけです。」 「大佐、餌が足りずに共食いでもしたんでしょう。」 「ならば良いが・・・。引き続き避難にあたっては十分注意するよう伝えろ。」 「ヘリよりゴジラを目視で確認、コウモリの群、ゴジラと接触します。」 「巻き添えにならんようヘリは離脱させろ!」 ゴジラは月夜の空を覆い頭上を旋回する黒い影に気づき威嚇の咆哮をあげる。 ギャオェェェェェ〜〜〜〜〜ン!! それに呼応するかの様にコウモリ達は甲高い叫び声を上げながら急降下を始める。 キィィィィィィィーーーーーーッ! 背鰭を素早く光らせたゴジラの放射熱線が夜空を一閃する。 ゴォォォォォォーーーーーッ!! コウモリ達はとっさに群を分けたものの数匹は一瞬に火だるまになりきりもみになって夜の海に落下していく。 いったん体勢を立て直したコウモリ達が再び急降下を始める。 キィィィッ、キィィィィィィーーーーーーッツ 戦闘機すらたたき落とした極超音波はゴジラには五月蝿い雑音にしか聞こえていないのだろうか? 再びの放射熱線!さらに背後から突っ込んできた一群は体を捻りながらその巨大な尻尾でたたき落とす。 かろうじて十数匹がゴジラの体にとりついた。 人間なら一瞬にして引き裂くはずのその鋭い牙も爪も、怪獣王にはかすり傷一つ付けることはできない。 しかもゴジラはコウモリ達をくっつけたままいきなり海中に没する。 激しい水泡と共に動かなくなったコウモリが1つ、また1つと浮かんでくる。 ゴジラが再び海面に姿を現したとき、すでに空を舞うコウモリ達の数は半分に減っていた。 しかし残ったコウモリ達は決して勝ち目のあるとは思えない突撃を果敢に繰り返すのだった。 「しかし妙だな。最後の1匹がやられるまで戦うつもりだろうか。」 「何が妙なのよ、真田君。」 「菖蒲さん、群で行動する生き物は相互に意志疎通を行っていて無益な戦いはしないはずなんです。」 「でもさあ、蜂なんかは攻撃されると残りの仲間を攻撃的にさせるフェロモンを出すんだろ?」 「コウモリは仮にもほ乳類だ。群が全滅する道なんか選ばないさ。」 「じゃあディオガルスに操られているんだろう。」 その時阿須美があっと叫び声を上げた。 「そうだわ、すっかり忘れていました。 魅霊蝙蝠は種の存続をかけた戦いの前には、仲間のうち特別な1羽を選び、 その他が『闇の力』をそれに分け与え巨大化させるのだそうです。」 「『特別な1羽』ですって?!!」 「即席で決戦用の超巨大コウモリを作りあげるってのか?」 阿須美は黙って頷く。 「足りない1羽がきっとそれです。 多分魅霊蝙蝠達はその1羽が完全な姿に育つ前の時間稼ぎをしているんだと思います。」 「しかし巣には残っていないんだぞ。」 「じゃあきっとどこか他に・・・。」 ゴジラを襲った最後の1羽が火だるまになって落下していった時、ディオガルスの電磁界の最南縁、東京タワーの残骸の中ではひときわ甲高い鳴き声が響いていた。 キィィィィィィィーーーーーーーーーーーーッ!!!!
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