日の出埠頭

物々しい放射能防護服を着た数人の防衛隊員に見守られながら、同じく防護服を着た真田と金城は放射能測定装置のセッティングを急いでいる。
「お前もバカだよ、真田。」
「何でだよ?」
「ゴジラが放射能を食うだなんてさあ。思いついても言わないもんだ。」
「お前、まだおれの話を信じていないのか?」
「ば〜か。おれだって真っ先にお前と同じ事は考えついたさ。」
「じゃあ、何で?」
「そんなこと迂闊に口に出すからこんなヤバイ橋を渡る羽目になるんじゃないか。
 復讐に殺気立ってるゴジラに近づいて放射能測定をするなんてさ。」
「じゃあ黙ってるべきだったと言うのか?」
「そりゃあたまたまおれ達はこの一件に関わったさ。
 だけど考えても見ろ。おれ達は元・怪獣島職員で、防衛隊隊員じゃないんだぞ。
 深入りしだすときりがなくなる。」
「じゃあ阿須美さんはどうなんだ?」
「彼女は・・・・・。」
「ディオガルスの巫女だから当然の務めだとでもいうのか?」
「真田・・・お前・・・・。」
「だれかに押しつければ済む問題じゃないだろう。
 だれかがゴジラに関わらなければならないとしたら、それは間違いなくおれの務めだと信じてる。」
その時隊員の一人が海を指さした。
「来ました、ゴジラです!!」
月明かりに照らされながらそのあまりにも巨大な怪獣王はまっすぐに真田達の方へ向かってくる。
「おい、真田、大丈夫なのかぁ?」
「今のゴジラはちっぽけな人間になんて目もくれないさ。」

日の出埠頭に上陸したゴジラはもう一度体を大きく揺すり水しぶきをはねとばした。
その降り注ぐ「海水の雨」の中を放射能測定装置を構えてゴジラに近づく真田達。
目まぐるしく上昇するデジタルの数字。
「やっぱりだ、凄い値だぞ、これは!!
 京都の10倍、いや、20倍はあるな。やっぱりゴジラは原潜を襲って核を吸収したのか!」
「真田、これ以上は危険だ。こんな防護服じゃもたない!」

JR線に達したゴジラはゆっくりと向きを変え、JR線沿いに北上を始める。
「ディオガルスの跡を辿るつもりか。」
「真田さん、金城さん、ヘリへ!ゴジラとこれだけ距離があればもう大丈夫でしょう。」
防衛隊隊員に急かされて二人がヘリに乗り込もうとしたその時だった。
キィィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!
バキバキバキッ!!!!
甲高い鳴き声が響き、ゴジラの進行方向左側、つまり元東京タワーのあった場所から轟音と共に真っ黒な巨大な影が飛び立った。
「あ、あれはっ?!」「あれが阿須美さんの言っていた『特別な1羽』!」
「東京タワーの残骸に隠れていやがったんだ!!」

その巨大ミレコウモリは足にタワーの残骸を掴んでいた。
急いで向き直ったゴジラにそれをたたきつけるように落とす。
ズドドーーーーン!!
ゴジラはたまらずひっくり返る。
羽ばたきながら宙に静止したミレコウモリの口から再び発せられるあの甲高い鳴き声!
その声はますます甲高くなり真田達はたまらず耳を押さえる。
キィィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!
辺りのビルの壁面に部数のひび割れが走り、いくつかのビルは倒壊し始める。
「何なんだ、あの鳴き声は?!!」「極超音波?!!!!」
タワーの残骸をはねのけて起きあがろうとしたゴジラめがけて、ミレコウモリは鳴き声を上げながら急降下していく。
その影がゴジラと交わった瞬間、閃光が走る。
と、次の瞬間ゴジラの肩がバックリと裂け、そこから鮮血が迸る!
ギャオェェェェェ〜〜〜〜〜ン!!
悲鳴のような咆哮を上げながら再びゴジラはもんどりうって倒れた。
血飛沫をまき散らしながらもがくゴジラを宙に静止したまま見るミレコウモリの顔はまるでにやりと笑うかのようにも見える。
その目の見つめる先はゴジラの喉元!
キィィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!
再び耳をつんざく極超音波の鳴き声を発しながら急降下するミレコウモリ。
まさにそれがゴジラの喉を引き裂かんとしたその瞬間、ゴジラの背鰭が素早く発光する!!
ヴァヴァヴァーーーーーーッ!
キィィィ〜〜〜〜〜〜ッ!!!
急降下してきたミレコウモリはその放射熱線をまともに浴びることになった。
一瞬で火だるまになったそれはビル街に落下していく。
ゆっくり起きあがったゴジラは羽を焼かれ黒こげになって転げ回る「敵」を見る。
首を軽く後ろに反らしながら再び背鰭を光らせる。
ゴゴーーーーーーーーッ!!
キキィィィ・・・・・キィ・・・・・・・・・
その放射熱線はミレコウモリの断末魔ごと全てを炎の中に包み込んでいく。
その炎の中にもはや動くものが無くなったことを確かめた怪獣王は再びゆっくりと北に向かって進み始めた。

「もうゴジラを遮るものは何もない。ついに最終バトルが始まるんだ!
 金城、急いで戻ろう。基地で強化コントロール装置の再チェックを。
 ゴジラが勝てばもう一度あれの出番だ。」
「がってん承知ときたもんだ!」


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