立川基地
真田達が司令室に駆け戻ったとき、全員が固唾をのんでスクリーンを見つめていた。 「どうなっています、ゴジラは?!」 「ご苦労だった。君の言うとおりディオガルスの取った進路をまっすぐになぞっている。 他の物にはわき目もふらずにな。 ゴジラが我々の前に姿を現して以来、こんな『静かな』上陸は初めてだ。」 大田原大佐はスクリーンを見つめたまま答えた。 「現在位置は?」 「今はJR神田駅を過ぎた所だ。で、君たちの方はどうだった?ゴジラの放射能測定の結果は??」 「京都の時の約20倍以上の放射能です。 米原潜を襲って放射能を吸収したのは間違いないでしょう。 京都の時は無様な負け方をしましたが、もし核エネルギーがやつの『バトル・エネルギー』なら ゴジラにも勝ち目があります。」 「では聞くが、その強大になったゴジラがディオガルスを倒したとして後はどうする? 『魔』の恐怖は遠のくとしても、そんなゴジラに彷徨かれたらそれこそわが国は一気にとどめをさされることになる。」 「こっちにはまだ『強化コントロール装置』があります。 『強化コントロール装置』でゴジラを神無島まで誘導すれば・・・・」 「ディオガルスではなくゴジラを特甲弾で倒そうと言うのか?」 大佐は傍らの中島少佐に目配せする。 少佐は黙ったまま一度頷いた。 「わかった。ここまで来たら運を天に任せてみよう。」 「ゴジラ、お茶の水駅を通過!!」 「ディオガルスの巣の様子はどうだ?!」 「先ほどから不規則な点滅を始めましたがディオガルスはまだ巣から姿を現しません!!」 「エリア内の住民避難は完了しているんだろうな?できるだけ巣から離れさせろ!」 エリア外の避難所の一つ 隆二は大事なゴジラのソフビ人形をしっかり抱き抱えたまま巣を指さした。 「あっ、見てよ、お兄ちゃん!ホラ、ゴジラだ!ゴジラが来てくれたよ!!」 「えっ?!・・・ホントだ。ホントにゴジラが来たんだ!」 「絶対ゴジラはディオガルスをやっつけてくれるよね、お父さん!!」 少しやつれた父親は、しかし力強く兄弟の肩を抱いた。 「ああ、きっとゴジラが勝つよ。みんなで応援しよう。」 「ゴジラァァ、がんばれぇぇぇ!ディオガルスなんかやっつけちゃえぇぇぇぇ!!!」 隆二はソフビを高く差し上げて大きく振った。 元東京ドーム前 グルルルル・・・・・・・・ ゴジラは低く唸りながら夜空にそびえ立つ京都の時よりはるかに巨大な蒼白の巣を見上げた。 その巣は不規則な点滅を懲り返していたが徐々にその点滅のピッチが早くなってくる。 そしてその点滅が消えた次の瞬間、巣全体がまばゆく発光し、辺りを真昼のように照らしだした。 一斉に飛び立つ鬼秋津。 スヴァヴァヴァヴァヴァーーーーーッ!! ゴジラは素早く背鰭を発光させその小うるさい「トンボ」を焼き払う。 焼けこげあちこちに散乱した鬼秋津達が燃え尽きるまでのしばしの静寂。 ふたたび巣の発光が消えると同時にその一角がぐにゃりと歪み、出口を形作っていく。 そしてその中から獣王ディオガルスがゆっくりとその姿を現す。 それはゴジラを睨むと威嚇するかのようにひときわ長く咆哮する。 グオォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーッ! そしてそれに応えるかのようにゴジラも・・・ ギャオェェェェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!! 月明かりの下で二頭の巨獣は再び向かい合ったのだった。 「いよいよ始まるぞ、最後の決戦が!!」
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