駿河湾海上
ゴジラは背鰭のみを海上に出してゆっくりとそのヘリに従っている。 遠巻きに海防の艦船がそれに追従する。 「真田、まずいぞ、これは!」 「どうしたんだ?!!」 「さっきからコントロール装置のシンクロ率が急に落ち始めている。」 「何だって?!」 「今、75・・・72・・・70・・・・」 「何て事だ、神無島までもう少しだって言うのに!」 「核エネルギーを吸収したことで細胞変異のスピードが上がってるのかも知れない。 お願いだぁ、もうあとちょっともってくれぇ!!」 やがてヘリの前方に作業燈が瞬く神無島が見えてくる。 「あそこだ!金城、シンクロ率は?!!」 「35・・・31・・・25・・・まだ落ちていく!海防に連絡を取ろうか?!」 その時ヘリの無線機に着信。 「中島だ。こっちからへりを目視で確認した。こっちの準備は完了している。いつでもいいぞ。」 「それが少佐、コントロール装置のシンクロ率が急激に低下してきていて、コントロールが!」 「何だって?!!」 しばしの沈黙の後、無線機の向こうの少佐はしっかりした声で言った。 「わかった。おれにまかせろ。」 神無島海岸 「ダメだ、真田!!シンクロ率が・・・・3・・・・2・・・・1・・・・・0!コントロール不能!!」 それと同時にゴジラの歩みがぴたりと止まる。 辺りを見回し低く唸るゴジラ。 グゥゥゥゥゥーーーーー 「くそうっ、何てことだ、ここまで来ながら!!」 真田が悔しげにヘリの風防を叩く。 その時だった。 まばゆいサーチライトの明かりがゴジラを照らす。 バリバリバリバリッ!! 1機の対戦車ヘリがバルカン砲を乱射しながらゴジラに向かっていく。 「あれは・・・・・まさか、少佐?!!」 バシュッ!! 白い航跡を残しながら対戦車ミサイルがゴジラに向かって飛ぶ。 ズババ〜〜ン!ギャオェェェェ〜〜〜〜〜〜〜ン!! まさに海に戻ろうとしていた怪獣王が振り返る。 ヘリの操縦席では鬼神のような表情の中島少佐がトリガーを握りしめている。 「おれを見ろ!おれが憎いなら俺を殺してから行け!!おれも貴様が憎いんだ!!!」 ゴジラはそのヘリを睨み付ける。 中島少佐はぞっとするようなその視線を逆に睨み返す。 「そうだ、その目だ。今度こそはおれは決して目を逸らさないぞ!」 ギャオェェェェェェェェ〜〜〜〜〜ン!! 天に向かって咆哮したゴジラはゆっくりと身を翻しそのヘリを追い始めた。 後退するヘリを追ったゴジラはついに作業燈で囲まれたエリアの中に達した。 「今だ、爆破!!!」 ズドドドドドーーーーーーン!!!!! エリアを取り囲むように仕掛けられた特・乙型301号地雷がゴジラを一瞬釘付けにする。 次の瞬間ひときわ大きい爆発が次々と起こりゴジラの姿を包み込んでいく。 ドガガガガガァァァーーーーーン 天地を揺るがす爆音と辺りを昼のように照らす閃光!! ギィィェェェェェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!! 絞り出すような甲高い叫びを上げながらゴジラの巨体はその爆煙の中に消えていった。 「やったぁ、やったぞ!!!」 真田と金城はかたい握手を交わす。 その瞬間菖蒲の腕の中の阿須美が握りしめていた玉がパシッという音と共に砕け散る。 やがて蒼白だったその頬には紅みが戻り、その胸は静かに動き始めた。 「阿須美さんっ!!」 「私・・・・ゴジラは・・・・龍はどうなりました。」 「全部・・・今度こそ全部終わったよ。」 真田は黒煙を上げる神無島を指さす。 しばらくその光景を見つめていた阿須美はゆっくりと目を閉じ手を合わせる・・・・・・・・・
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