翌早朝、犬山市防衛隊基地。
大田原大佐と中島少佐が地図に向かっている。 「現在、海防の潜水艦、「さがみ」と「きりしま」が伊良湖水道に待機、警戒にあたっていますが、怪獣が伊勢湾の外に出た形跡は無いそうです。 中部電力の報告によると昨夜半から名古屋市一帯で大規模な電力低下、停電が頻発しているとのことから、多分ヤツはまだ湾内に。」 「再上陸もありえるということだな。横須賀からの駆逐艦はどうなっている?」 「「しまね」「こんごう」「ひりゅう」「かいりゅう」の4隻が0800に伊勢湾に到着の予定、到着次第掃海作戦に移ります。」 「少佐、ご面会の方が。」 「面会?だれだこんな時に??」 「怪獣島の主任補佐、真田とおっしゃってますが。」 「怪獣島の??こんな所まで何の用だ?」 「あの怪獣のことでどうしても伝えたいことがあると。」 司令室に入ってくる真田、金城、阿須美、菖蒲。 「作戦行動中だ。手短にお願いする。第一お前達が何を知ってるって言うんだ?」 阿須美、一歩進み出て一気にまくしたてる。 「あれは獣王ディオガルス、あなた達が怪獣島を爆破したせいで1000年の眠りから目覚めて復讐にやってきたのです!」 一瞬黙った中島は、思わず吹き出した。 「お嬢さん、そりゃあいったい何の話だ?子供の夢物語につき合ってる暇は無いんだがね。」 真田も一歩前に出て阿須美の代わりに話し始める。 「少佐、これは夢物語なんかじゃない。実の所おれだってあの怪獣が出てくるまで半分は信じてなかった。でも彼女の話はまぎれもない事実だ。」 「ではそのお嬢さんに敬意を表してヤツをディオルガスと呼ばせて頂くとしてだなあ・・・」 「ディオガルスです!」 むっとする阿須美。 「ああ、そのディオガルスとやらは今後何をやらかすんだい?」 「その昔ディオガルスは朝廷の命を受けた光明の一族に退治され封印されました。 蘇ったヤツが狙うのは、かって追われた京の都。」 「あの怪獣が京都に?!そりゃあ大変だ。そうだ、いっそその『光明の一族』とやらにもう一度退治して欲しいもんだな、あっはっはっ・・・。」 「すでにおじいさまは『竜返し』の術を施されました!」 「ゴジラだ、ゴジラがやって来るんだよ、少佐!」 思わず表情がこわばる中島。 「ゴジラだって?!!!バカ言ってもらっちゃこまる。ヤツは特甲弾で怪獣島ごとふっ飛んだんだ。生きてるはずがない。」 「信じなくとも龍は必ずやってきます。」 じっとやりとりを聞いていた大田原大佐が口を挟んでくる。 「信じるわけではないが、もう少し詳しく聞かせてもらえないか?いずれにせよあの怪獣・・・ディオガルスとやらについて我々は全く情報がないのだ。」 「大佐、こんな馬鹿げた話、聞くだけ時間の無駄ですよ!」 「まあ待て、少佐。まもなく伊勢湾の掃海が始まるとしてそれは海防の仕事だ。 しかも沿岸地域の住民の避難は遅々として進んでいない。 本来なら水際でくい止めたいが、どこに現れるかわからんのでは軍の配置も決められない。 万が一上陸した際に対戦車ヘリを配置するしかできんのが我々の現状だ。」 「し、しかし・・・ヤツが目指す先が京都だとしてもどこに上がって来るのかはわからないじゃないですか。 第一、京を目指すなら何故静岡なんかに上陸したんですかっ?!!」 それを聞いていた阿須美、はっとする。 「静岡から小笠原に渡ったからよ!」 全員「えっ」という表情で阿須美を見つめる。 「ディオガルスはかって自分が導かれた道を遡ってるんだわ!」 「まさか・・・東海道か?!」 「平安の頃に東海道はまだ無かったんじゃないんですか?」 「何言ってるのよ。紀元前二世紀にはすでに東海道が開通していたと言われてるのよ。 奈良時代以前にはすでに駅制度(宿場制度)や関所が導入されていたんだから。」 「いずれにせよ名古屋から西へ向かう道はここを通るしかあるまい!」 大田原大佐が指さす地図は・・・・・ 「関ヶ原!!」 「少佐、関ヶ原でディオガルス迎撃戦を行う。付近住民の避難急がせろ。 君は舞鶴の戦車大隊と合流して関ヶ原に防衛ラインを構築せよ!!」 「はっ!!」 敬礼する中島少佐。 「さてお嬢さん、話の続きを聞かせて頂こう。」 大佐はにっこり微笑みながら阿須美を振り返った。
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